CBTの特色

SU080.JPG      <CBT(認知行動療法)の特色>

 

  1  CBTで私が注目した事項 

    (1)  エビデンス

   実験、観察に基づく科学的根拠を

    基 礎にしています。このことは                                              

                                                                   エゾスズラン

      CBTに関する記事の冒頭でもお伝えしたとおりです。             

        例えば不安神経症の人の恐れの程度が治療でどう好転するか

   数値化し、行動を観察することで実証できます。(行動療法のばくろ法)

         また、CBTには、薬物療法と同等の効果があるとされ、さらに

   効果の持続時間では、薬物より長いと認められています。米英では、

   うつ病と不安障害の治療ガイドラインでCBTを第一選択としています。

    (2)   インフォ-ムドコンセント

      先月のカウンセラ-のブログであるクリニックに付き添った体験を

      述べました。ここでは、伊藤絵美先生(ベック氏の理論に造詣の

      深いCBTの権威者の一人)のワ-クショップのテキストより引用します。

      患者との初期面接で、今後のセッションの進め方、その手法を

      説明して治療契約することから始まり、患者から色々な情報を収集

      して何が問題かを明らかにします。その上で治療についての患者の

      期待を聞き、セッョションで対応できる事と、出ないことを明らかにして

      おくとのことです。 患者への配慮がなされ、安心して受診でき

      ます。

 

      (3) CBTのカウンセリングと来談者中心療法

               両者は、補完的な関係にありますが、まずは、暖かい傾聴により

       患者を受容し、共感することで良好な信頼関係を築かないと

       CBTは通用しません。 健常者とは異なった細やかな心遣いが

       出来ないと、信頼関係は築けません。 それを土台にして双方向の

       対話をしながら患者の抱える問題を共有して具体的解決策を共に

       考えていく方法をとります。事例を検討してみますと、あるプロコ-チの

       指摘のようにコ-チングに近い手法が使われています。 

 

 

 

      バイカウツギ                                      SU153.JPG 

2 CBTの考え方の基本

         ▲  CBTの基本的発想図(心の見取り図)

                     坂野雄二著  「こころの科学」の認知行動療法の基本を学ぶ

        

                   環境(人間関係、生活環境)                               

                     情緒(感情の動き)

                                ↓        

      様々な刺激⇒ 身体   →    ←        行動                                   

                             ↑     

                     思考(自動思考)

 

   CBTの権威者の一人坂野先生の記事より図を少し変えて引用しました。       

       外部環境の特に人との関わりの中で感情、身体、思考(自動思考)、行動に

       どんな影響を与え、また、それらが他の要素にどう影響し合うのか、

       認知の問題に焦点を当てて述べていきます。  

、       図の表示の仕方がまずくて申し訳ありませんが、外部から本人に入ってくる

       刺戟は、身体のみでなく、他の感情、思考、行動にも影響を与えます。

       身体、思考等の四つの要素は、隣接している他の要素と相互に

       影響し合っています。 真向いの身体と情緒、情緒と行動もそうです。

  

      特に自動思考は、すでに説明しましたように、瞬間的な本人のつぶやき

       として出るもので、その心の奥にスキ-マ(考えかたのくせ)、誤った

      推論(--すべきだetc)による認知の歪みが潜んでいます。

   

                     ▲     ある職場の事例

        Aさんは、今日も、上司から依頼された仕事にミスが発覚して上司に

        叱責されました。その時の自動思考、感情、身体、行動の状況は

         以下の通りでした。

          1  自動思考

         a またやってしまった。   b 自分はダメな人間だ。

         c  仕事をする資格はない。

          2  感情の状況

          a  落ち込んでしまう。  b   やる気がなくなる。

                c  悲しくなる。

      3    身体 の状態

       a  胃が痛む    b  体がだるい。  c  顔がこわばる。

      4    行動の変化

        a  顔を伏せる。 b  肩をおとす。 c  仕事を中断して外に出る。

        ◎このような抑うつ的な人に対してどのようなカウンセリングを

        したら良いでしょうか?

               自己否定の自動思考、気分も、体調も悪化して仕事の中断、

            その間仕事がたまって、また上司に叱られるかも知れませんし

            たまった仕事をみてさらに気分、体調等の悪化という悪循環に

            はまってしまって救いようなしの感じです。 その時まず注目すべ

            きは、自動思考です。

             自動思考として、瞬間的に飛び出す言葉の中でスキ-マに相当する

         「自分はダメな人間」につい心を奪われて、この認知の歪みを正そうと

          する気になりがちです。でもスキ-マなるものは、その人の心の 

          深層に根付いて定着してしまったものだけに、相手に問いかけ、その

           除去に努めても、はね返されてしまって前進できません。

         それに対して「またやった」の方が相手と対話しやすいのです。

        同じようなミスを度々している状況です。

        直近の1、2年で同じようなミスをしたとき、どのような心境に

        なったのか?

              「仕事に集中できなかった」、「気になることがあった」、「イライラしてた」

         など。それらの背後には、どんな出来事があつたのかその原因を

         探るとミスの根源が見えてくることがあります。 例えば家族との

        人間関係がよくなくてストレスになり易くて、それが仕事に波及して

         いや気がさすことで能率も悪く、ミスも発生しやすいことになります。

         上記の心の見取り図の中で、思考と行動は変えることで感情、体に

         影響を及ぼし、適応的対応を可能にします。

      

         昼間のNHKの教育TVで千葉大のCBTの権威 清水栄司先生が

       メンタルの病気で苦しんでいた人々との対話の中で、「病気の克服

       過程の中での 外在化」の大切さを訴えていました。

     者が病気に支配されて苦しんでいるのでなく、

       そのように苦しんでいる自分を第三者の立場から客観的に

       冷静に観察することなのです。

         上記の職場の事例もそのことと目標は同じです。

          もともと自分はミスの多いだめ人間ではなく、ストレスを仕事

          に持ち込んでそれに集中できないからミスの多いダメ人間を演じて

          いるのだ。」 と気づいて問題解決の糸口を見つけたとき、心が楽に

          なって歪んだ認知からの脱出の道が見えてくるのです。        

      

          この「外在化」はカウンセラ-にとっても大切な言葉です。

          すでにカウンセラ-のブログで述べましたように今自分が

          クライアントとどんな関わりをしているか、相手の核心に関わって

          いるのか、ずれているのかを第三者の目で見れる、NLPでいう

          ディソシエイトが必要かと思いました。

              自分自身のカウンセリングの外在化が機能したら、認知の歪み

           から脱して本当の潜在する良き自分に気づいて、 「自分だって

            やれるのだ」という自己効力感が湧き出てくると思います。

            現在 発達障害で苦闘している青年だって泥や埃でおおわれた

            ダイヤモンドのような貴重なりソ-スが自分にもあることに

            気づくことを期待しています。

 

                              SU055.JPG

       ところで上記の自動思考は、瞬間に出てくるもので、素早く出てきて

      消えてしまうもの。ですからとらえにくい。

       とらえにくいが、感情、行動へ強い影響力があります。

       時には自動思考のために、感情、行動を制御できません。

       不安、恐れ、怒りなどに伴って出る自動思考は、間違っている

       こともあります。そんな時の自動思考は不合理で、非現実的で 

        役立たずのことが多いのです。   

       平素の自分の自動思考は、正しいと思っても、強い感情が関わる

       時が要注意です。  誤った自動思考は、認知の歪みの原因に

       なるからです。

   ▲   自動思考についての検討

     (1) あなたの自動思考の正しさの根拠はなにか

       まずは、自分が大事と思う自動思考を選び、自分の経験から

        考えてみます。そのときの強い感情の中でつい出てしまって根拠

        が薄いことに気づくかも知れません。

     (2) 自動思考に対する反論

      これも、経験から考えて、別の観点から考えてみることも意義があります。

     (3) 論理的誤り

      すでにベック氏の認知療法で述べていますスキ-マ(考え方のくせ) に

      入り込んでいる「体系的推論の誤り」がその例です。

      例 恣意的推論 相手の一時的なマイナス反応を大きくとらえて落胆する

        拡大解釈---一つの失敗から自分を無能と決めつける。

       ◎ 以上のような観点より自動思考を検討いていくことが

         認知の歪み対策として有効な方法と考えられると思います。

 

 

 

3 CBTの治療過程(治療契約と基本原則)

    この単元では、CBTの著名な先生方の著作の一部を引用ながら述べます。

   治療契約  治療者は、治療の方針等の概略を患者に説明し、承諾を

    得た後に治療契約を結びます。 1回の対話のやりとり(セッション)の

    時間は、通例30分から50分で、終了までは、12回程度が普通です。

    費用は、公的保険の対象となる場合ですと1回で1300円です。

    但し国の規定では、30分以上診察しないと保険の対象となりません。

    CBTの専門医が非常に少なくて予約をとるのが大変です。

    他方医療機関以外ですと、治療に保険が適用できません。

    従って、1回50分で最低6000円が相場のようです。 金銭のこと以上

    に大事なことは、治療の信頼性です。「 こんな方法は、本来うつとは

    異なった次元で使うのに、大丈夫?」と思えるのがネットで出ています。

    CBTがなぜ普及したのか、最初ぺ-ジでエビデンスのこと、科学的

    根拠のことをお話ししました。患者がまな板の鯉のように、治療者

    にいいように操作されるのでなく、 治療者と患者がチ-ムを組んで

    問題点について一緒に考え、患者の気づきを促すサポ-トをします

      2  CBTを進めていく上での基本原則

       今後CBTの様々のスキルのことをお話ししますが、その前に

       その背後にあるCBTの基本原則について、CBTの数々の

       ワ-クショップを指導されてみえる伊藤絵美先生のCBT

       カウンセリング初級ワ-クショップテキストから引用しながら

        私の見解をのべることにします。

        基本原則1  常に基本モデルに沿ってクライアントの体験を

                                    理解する。

        すでに私が、例としてCBTの特色の中のCBTの基本で述べて

        いますのがその基本モデルです。 このような自動思考、感情

        身体の状況、行動の各要素が相互に影響し合っているのを

        まとめた図式がその例で、本人を客観的に観察する資料として

        大事です。過日千葉大の清水先生が、NHKテレビで「外在化」の

        ことをいってみえたのもそのことを意味しています。

       基本原則2   カウンセラ-とクライアントは、チ-ムを形成し

                信頼関係を通じて実証的見地から協同作業

                を行う。(協同的実証主義--ベックの定義)

        来談者中心と大きく異なっているのは、聞き手、話し手が固定

        せず、状況に応じてカウンセラ-が話し手になって進めていく双方向

        の対話法をとっています。 そのような親密で自由な対話により、

        クライアントの悩みや抱えている課題に焦点をあてて問題解決を

        目指します。 その際に実証的見地に立つことがCBTらしい特色です。

      

        憶測でなく、クライアントの実際の体験(エビデンス)をもとに 問題を

        理解し、解決を目指します。 ですから状況の判断のための情報を

        正確に入手しようとする時、クライアントからしつこく聴くことだっていくら

         でもあるのです。 「しつこく聴く」という言葉は、伊藤先生が話された

         そのまま引用しました。私がこの言葉に強い関心をもったのは、今の

         NPOの理事にハンディのある青年達のカウンセリングを依頼されて

         カウンセリングの困難さを痛感した時でした。精神科医も無理だと

         いっているのを聞きました。 その時ヒントになったのは、この双方向

        の対話でした。 ただ傾聴するだけでなく、カウンセラ-の「あなたの

         苦しみからの出口は必ずみつかる。自分は、そのためにやれること

         は、何でもする。」という決意表明、それに至る方法の説明と彼の

         理解と承諾(すでに「カウンセラ-として話したいこと 」昨年12月2日)

                 による公約をしました。その実行をし、彼とのカウンセリングは軌道に

          のっています。しつこく質問しても、信頼関係があれば相手も

           正直に答えてくれます。

                                       JF139_72A.jpg         

                基本原則3 「今ここの問題」に焦点を当てその解決を

                             目指す⇒問題解決志向

            この原則について、伊藤先生の言ってみえることに異存は、

            ありません。 現在の問題に焦点を当てるときでも、当人の 

            過去や将来のことも当然検討する必要があります。就労

             支援では、いつもそのことを考えています。

             また問題を理解して解決に当ることも

             就労支援では不可欠です。自分の適性、能力を理解せず

             希望の職種を言って来られても、どうすることも出来なくて

             困ることがあります。

                        基本原則 4  心理教育を重視し、クライアント自身が

                     自己治療やセルフカウンセリングが出来

                       るようになることを目指す。それによって

                      再発を予防する  

                          この原則では、カウンセラ-の治療方針というよりも、むしろ

               クライアントのためにどのように教育するかという指針、目標

               がよく表現されています。特にクライアントの成長力の発揮

               自力による再発予防について強い共感を覚えます。    

               

                             それからカウンセラ-がクライアントを教育していく上で

                必要なきめ細かい心遣いがきちんと述べられていることも

                好感がもてました。「カウンセラ-は、口頭で説明することも

                 あれば、図や絵を描いて提示すること---様々な文書も

                渡します。CBTのテキストや病気について書いてある文

                献を見せること---コピ-を渡すこともあります。」

                   このカウンセラ-の熱い思いやりはクライアント

                 のCBTに対してのレジネス(心の準備)、学ぶ意欲

                 を高めるのに効果があると痛感しました。

                                  自分自身クライアントによっては、このような配慮

                 も必要ではないかと思い参考になりました。

                基本原則 5   毎セッションおよび初回から終結までの流れを

                   構造化する

          1つのセッションで最初の15分でアセスメントをして、次の20分で

          認知の基本モデルについて説明し、図式化の練習してみるという

          ように段取りして、今は、どんな段階の時か明確にして、時間を効率

          よく使います。それにより各セッションの総括のとき、問題点、課題

          を整理し易くなりますし、現在のセッションの進捗状況の把握、その

          調整もし易くなります。特にメンタル上困難な問題を抱えている人は

          カウンセリングの時間は長くなります。従ってメリハリの効く対応が

          必要です。 

                 基本原則 6 カウンセリングにおける具体的目標を定め

                その達成のために多様な技法をパッケ-ジ化して

                活用する。

         ここでいう技法のパッケ-ジとは、色々な場合で利用できるいくつ     

         かの技法の一つのかたまりの総称してそう呼んでいます。後に

         スキル利用のお話でも出てきます。

         すでに私がブログで使用していますリラックセ-ション、イメ-ジ

         技法、ばくろ法などの行動療法、ロ-ルプレイ、アサ-ションなど。

         これらの技法を使用する際には、カウンセリングで目指す目標を

         設定し、その目標達成のために必要な技法をいくつか選びます。

         なお、伊と藤先生がご指摘のとおり、その目標設定で大事な事は

         本人の人生、生活における目標とカウンセリングで扱う目標との

         区別です。 つまり、本人が望んでいる目標でも、カウンセリング

         として今扱うことが妥当かどうかを検討する必要があるからです。

         

         特にメンタル不調で本人の情緒の安定性、思考力に問題が

         ある場合、思いつきで言っているのか、優先順位を考えるともっと

         身近に大事なことがないのか等よく確かめる必要があります。

                  また、私の「カウンセラ-として話したいいこと」今年の4月20日

         の青年のように実行したくても前進でない気持ちを受容する

         こともとても大切です。 そして状況をみてイメ-ジ技法、ロ-ル

         プレイなどで彼のプラス志向を高めていくのが得策と思います。

 

                          JF113_72A.jpg

                       花畑  十勝岳連峰                      

4 治療過程(全体の流れと基本スキル)

            1 全体の流れ

             (1)  治療の初期

        a まずは、クライアントの個人的な情報集めのアセスメントをします。

         本人の家庭環境、成育歴、学歴、職歴、心身の症状、対人関係

         等を収集しながらそれらに関わる問題を把握します。もちろん

         本人の同意のもとに進めていきます。 また、こころの科学の

         なかで、大野裕先生、渡邊義信先生共著のうつに関する記事で

         「本人の治療についての期待も尋ね、過大な場合は、訂正して

          おく」 「セッションでできることとできないことを明示しておく」

          とのアドバイスは参考になります。弱い立場の人への配慮と

          してこれも大切なことと感じました

                    b  心理教育  

                      本人が抱えている症状の特色、治療方法、生活上の具体的

            対応方法などについて説明します。その対応方法の中に、

             基本原則4に出ていますホ-ムワ-クを通しての本人自身の

            自己治療、セルフカウンセリングを目指した自助努力も

            も含まれています。さらに「クライアントが特に気になっている

            部分があれば解消しておく」(上記の心の科学)の指摘も当

            本人の不安を少なくする思いやりですし、参考にしたいと  

            感じました。

            C  CBTの技法の基本について

            認知モデルの理解をして頂いて、否定的自動思考から

            始まる悪循環の修正が焦点になります。

            個人差がありますが、このcは、上記bに組み込まれていく

            場合が多いのです。

                       (2)  治療の中期

              CBTの技法の導入とその適用

             認知再構成法と問題解決法についての実践

               

              話題についての対話とホ-ムワ-クの課題について

            (3) 治療の終結

              全体を振り返って学んだ技法の要点を確認し

              再発防止のために話し合います。

              、bの心理教育で強調ているクライアント自身の

              自己治療、セルフカウンセリングの実践が

              きちんと機能しているかの再確認がなされます。

               その際、うつの場合、今は、仮に回復したと思い込んで

               いても、情動の変化の波がかなり大きくて、また落ち込むこと

               があることを告げ、そのような時、自力回復に不安のある

               人は、フォロ-アップ面接を受けることができる旨予告して

               おくと安心しますのでこのような心遣いも必要かと痛感

               しています。 

                       2   CBTの基本スキル

             基本スキル1    双方向のコミニュケ-ション

              伊藤先生のクライアントさんから聞かれた多くの苦情

              として次の二点 a  話をきちんと聞いてもらえなかった。

                         b  話を聞くだけで何もしてもらえなかった。    

               これに対して先生は、「何のためにカウンセリングを

               するのか? どのような効果があるのか」について

               クライアントに説明していない。そのような合意が

               なされていない、というインフォ-ムドコンセントに関わる

               ことを指摘されています。 私もこれに類似した記事を

               6月22 日のブログ「カウンセラ-として 話したいこと」

               に掲載しました。このような状況にたいして先生は

               援助者側のすべき事として二つの提言をされています。

                a  話を適度に聞く。 

                b  聞いた上で対応する。

                この当たりまえの対応をしていない専門家が多いから

                上記のような苦情が多く聞かれるとのことです。

                               ここのa の適度に聞くとは、ただ聞くだけでなく、相手

                の気持を受け止めて bのように次のアクションを

                おこすという心遣いのことを言ってみえると感じます。

                うつなどのメンタルにハンディのある人々には、それに

                応じた血の通った暖かさが伝わらないと、「こんな人に

                自分の気持なんか分かるもんか」という心境になった

                とうつ経験者から聞いたことがあります。 偉そうな事

                など言えませんが、実際に現場でハンディのある

                方々をお世話していますと、型にはまった傾聴の

                手法では通用しません。技法より、愛情に裏付けられ

                 た信念が相手の心に響くものと痛感しています。

 夏の知床半島            JF149_72A.jpg

                           伊藤先生は、CBTで目指すべきことに言及して

               「 こんな対話のことは高度に専門的、特殊なことで

               なく、むしろ私たちが何気なくやっている気分のよい

               対話を実現することではないか」述べていますが

               カウンセラ-が医師の診断の時のように一段高い所から

               「さあカウンセリグしますよ」というようなスタンスで は

               クライアントは緊張感をもって構えてしまいます。

               だから自然体の普通の対話でよいのです。

                  さらに先生が「気分のよい対話の条件」を列挙

               された中で、私の注目点は、以下の4点です。

               a  率直さ b  双方が同程度に話す。

                         c  わからないことは訊く d 相手の発言を尊重する。

                         

                                双方向の対話の中て゛四つのことが実行されていく

                  ならば、自由な雰囲気の中で対話が進展することに

                  期待がもてます。とくに「相手の発言を尊重する」は

                  ロジャ-スのいうクライアントの変容条件の一つ

                 「無条件の肯定的配慮(受容) 」に関わることに 

                 関係していて大事なことと受けとめています。

                 この肯定的受容の質的なレベルの高さ次第で

                 クライアントの自己開示が進んでいきます。

                 この人は、私の気持が分かってくれるという

                 心境になるからです。それにプラスカウンセラ-

                                 タイミングのよい一言がさらなる効果を発揮する

                  こともあります。(うつの人に励ましとなることも)

                  それから、伊藤先生の方から双方向的対話のコツ

                として次の二つの提言がありました。

                a  親切である。 b  物分りが良すぎないこと

                  b につきましては、「カウンセラ-側の推測で理解

                   したつもりになっている」ことに対する忠告です。

                   エビデンス(確かな証拠)を重視するCBTの

                   立場です。ですから先生が「場合によっては

                   しつこく質問します」と言われるのもこの確実な

                   証拠を意識されてのことです。従ってエビデンス

                   に基づく対話であれば、具体的で、正確な理解

                   に基づく受容、共感も可能となり、信頼関係は

                   強くなります。

                                      ▲  ソクラテス式質問法  

                   元来この質問法は、彼が街頭に出て当時の地位ある

                   人に知っていると思つていることに質問して一緒

                   になって考え真理の探究に努めたことに始まり

                   ます。それに関してCBTではクライアントより、よ

                   り具体的な情報を得る方法として、ある程度内容

                   の幅を制限して開かれた質問(open question)

                   を使用します。これにより双方向の対話が活発に

                   進行することを目指します。

                  

                  伊藤先生は、この方式のポイントとして次の四つを

                  提言しています。

                a 当事者が自問し自ら発見できるよう問いかける。

                b  open question

                               c  どんな回答であれ相手の発言を尊重する。

                d  どんな回答であれ相手の発言に関心を示す。

                   

                   以上の四項目についての留意点について先生は

                   「どんな回答が出てもクライアントの発見として

                   尊重し、関心を示す」ことを忠告しています。

                   しかし、もし自己の予測外の回答が出た時

                   カウンセラ-に動揺が走ることがあります。似た

                   経験は、時々あります。でもかえって、その

                   相違の根拠が判明するような対話かできれば

                   さらに相手を知ることになります。                    

                           質問例   調子はどうでしたか?  時間と内容があいまい

                     先週体調はよかったですか?  (答えやすい)

                                      後者の質問で対話は進展します。

                     ◎ソクラテス式質問法の目的

                     (1) 質問によるモチべ-ションのUP

                                        他の箇所でも、先生は、クライアントに対して

                      「しつこく質問します」と述べています。

                      その目的は、クライアントについての理解と

                      その具体的情報(エビデンス)の共有により

                      モチべ-ションを高めることにあります。 

                      しかし、色々質問して情報を得るといっても

                      その前提がしっかりしていることが不可欠

                      と私は考えます。しっかりしたインフォ-ムド

                      コンセントとクライアントに対する細やかな

                      思いやりが必要と思います。 伊藤先生

                     の基本原則4の心理教育の中の説明の

                     仕方等を読んでもそのことを痛感します。

                     クライアントとの信頼関係がなくて、やた

                        らと質問しても効果はありません。

                      私のお世話しているメンタルにハンディ

                        のある青年が一昨日メンタルクリニック

                        へいって心理士から将来の就労など

                        聞いたそうです。しかし、彼の表情から

                        よい気持ちでなかったことがすぐ分かり

                        ました。ここが彼の一番痛いところなの

                        ですから、その痛みを受容しないと不快

                        感が残るだけです。そんな時瞬時の

                        カウンセリングの切り替えによる相手

                        へのケアが求められます。 

                                          

                                           (2) イメ-ジを共有できるまで質問を続ける。

                                           ここでは、CBTの基本モデル図の環境

                       本人の自動思考、感情、体感、行動等

                        にわたってしつこく質問することで現場の 

                       状況をリアルにイメ-ジ出来ます。

                       (コ-チングでいうビジュアル化)

                                        

                        カウンセラ-の描くイメ-ジと本人の体験

                      が一致した時、その場の状況の理解

                      とイメ-ジが共有できることになります。

                      実証的方法の過程がこれでよく理解

                      できますし、その間のカウンセラ-と

                      本人との信頼関係の強化もそうです。

                       さらに大事なことは、やがて本人が

                      このような手法に慣れてきますと

                      しつこく聞かれなくても自分で具体的

                      にその場の状況下の自己の思考や

                      感情、行動などを自力でイメ-ジできる

                      ようになり、基本原則4 心理教育で

                      述べているセルフカウンセリング、

                      再発予防の道が開けてくることです。

                        なお上記の「自分か慣れてくる」というのは

                        後で述べますセッションと伝導します

                         ホ-ムワ-クの作業によるコラム法(認知

                       再構成法)の実践でコツを習得する

                       からです。      

                                         

                       基本スキル2  アセスメントと心理教育

                     

                                        CBTのアセスメント

                    アセスメントの定義                            

                    クライアント自身について、クライアントが かか

                      える問題、クライアントが置かれている状況

                      などについて、その経過と現状を出来るだけ

                      多層的、全体的にとらえようとする手続き

                    

                                               アセスメントのポイント

 

                   1  認知的概念化、事例定式化とも呼ばれる 

                   2   医学的診断と整合する(DSM-W) 

                                     3   CBTの基本モデルに基づく

                                     4   アセスメントは常に参照、改定され続ける

                    5   尺度、数値を併せて使うことが望ましい 

                      (以上のアセメントに関する定義とポイントは

                      伊藤先生のCBT初級ワ-クショップより抜粋しま

                                               した。)

                                    

                       CBTにおけるアセスメント

                    1  認知的概念化、事例定式化 

、                      事例定式化=ケ-ス・フォ-ミュレ-ション

                      これは治療者がクライアントの個々の

                      事情(認知、行動、身体、感情の現象を

                      聞き取り、その内容を病気ごとの式と照合 

                      して分析することです。定式が特定できると

                      悩みの背景 が分かり、問題の解消が

                      可能となります。

                      なお、伊藤先生は、フォ-ミュレ-ションを

                      アセスメントに包括して使います。

                      私は、少しそれに抵抗感を感じますが

                      その意図されることは分かります。

                                 2   医学的診断と整合するDSM-W

                  The Dignostic and Stasitical manual

                                 of Manual Disorders   W=1994年版

                                アメリカ精神医学会が定義している

                  「精神疾患の分類と診断のマニュアルの基準」

                   これによって病名を特定するとはいえ、専門家で、

                   うつの場合、単なるうつなのか、躁うつなのか判定

                   を見誤ることがあるとのことです。

                   (DSMとは別に国際基準版があります)

                               ◎本人の病状に関するアセスメントにつきましては

                     フォ-ミュレ-ションで述べましたように、認知、行動、

                   身体、感情の現象について調べ、DSMと共通して

                   いれば、「 あなたのうつは、DSMに照合してみると

                  XXXです」ということができて診断の根拠が

                  明らかです。 しかし、次のような問題点も指摘

                 されています。(うつ病治療常識が変わる)          

       知床半島のエゾ鹿              NHKスペシャルより               JF151_72A.jpg

      上記の本の中で日本うつ病学会理事長の野村総一郎先生                  

     によると「DSMは、治療方針を決めるにあたって、とてもすぐれた システムだが

     その一方で浅薄化、マニュアル化と大衆化=自己診断                            

      の蔓延化を招いた」と指摘しています。 さらに続けて、

     「この方法は、科学主義という当初のねらいとは違った、思いがけない方向を

     もたらした。精神医学診断の浅薄化と大衆化である。 ---DSM-Wの解説

     部分には、「DSM-Wは料理の本ではない。これを見て簡単に診断が可能だ

     などと思ってはいけない」 とはっきり書いてあるも 、このような使われ方を

     恐れたためである。 しかし、だれもそのように書いている部分など読まない。

     ---さらにまずいのは、医学生や若い医者の教育の影響である。

     最近の若い精神科医はDSM-Wポケットブックという 薄手のマニュアル本  

     を白衣のポケットにに入れて診察している。 患者から症状を聞き出すと、この

     マニュアルをみて 該当する症状数を数えて診断一丁あがりとする」

     **ここでいう症状とは、直近の二週間で、抑うつ気分、無関心、食欲低下

       など九項目の症状が継続していくつあるかを数えて、うつかどうかの

       診断をする場合のことです。

       以上のご参考になれば幸いです。

                            3  CBTの基本モデルに基づくはアセスメントの当然の

                  ことです。これは後で具体例が出てきます。

               4  アセスメントの参照、改訂されつづける。

                CTBの考え 方の基本で悪循環に悩む社員のことを

                例示しました。その後の状況、認知、感情、行動が

                変化することで、悪循環や全体像は各々どう変わる

                のか、アセスメントシ-トに記録し、悪い時のそれと

                比較してみると自己の変化を客観的にみることが

                出来、「自己の外在化」の意味が実感として理解

                できます。 同類のコラム法も、このような自己分析

                力の成長を期待しています。

                             5   尺度、数値化による表示

                 これもコラム法に沿ったホ-ムワ-クの自己に関する

                 心、行動の記録の分析の時にこのことが出て

                  きます。例 その時の不安60%、セッションで

                  カウンセリングを受けた時20%になった。

                  このような実践を通してCBTへのモチべ-ション

                  を高めます。  

                             ▲   CBTにおける心理教育

                  以下に述べます上記の定義、そのポイントは

                  伊藤先生の「CBTカウンセリング初級

                  ワ-クショップ」から引用しました。

                ● 心理教育: 自分自身の抱える諸問題について

                  そしてCBTカウンセリングについてクライアントの

                  理解を深めるために実施される教育的

                             コミニュケ-ションのこと。

                ● 心理教育のポイント

                  私が注目したのは以下の通りです。

                a  「クライアントの体験や理解力にあった説明をする」

                   平均的な医師ですと、こんな配慮がなく、医師の

                   目線から言います。それと対照的に相手の目線                                                                           

                    に立った思いやりが 伝わってきます。                                 

                b   「 援助的であること」  特に病気のことを話す

                    時、ただ病名、症状を 伝えるのでなく、

                                    インフォ-ムドコンセントのときのように

                     基本スキル1に出ている

                     「話を聞いた上で対応する」の心遣いが

                     ここでも発揮されています。これにより

                     クライアントは安心できます。

                               c    「理論的根拠やエビデンスを示す」

                   エビデンス=真実であることの証拠

                   もう少し後でコラム法によるホ-ムワ-クが出て

                   きます。 「ただこれをして下さい」でなく、それを

                   するとどんな効果があるか実例を示せば

                   理解できますし、レジネス(学習前の心の準備)

                                   にも役立ちます。

                 d  (心理教育は)継続的プロセスである。

                   一度で終わるのてなく、機会あるごとに教えてい

                   く教育であると伊藤先生は強調されます。

                   これは、企業の安全配慮義務と似たところが

                   ありまして、一方通行のコミニュケ-ションでなく

                   色んな疑問、不安などをクライアントから

                   出すことで双方向の対話の長所が発揮できると

                   思います。

                  ▲  CBTがクライアントに求めることも

                    心理教育として伝える

                   伊藤先生は、どんなことでもフィ-ドバックしてもらう

                   必要があることを述べていますが、自分自身

                   特にメンタルにハンディのある人の場合 、一寸

                   したことでも、デリケ-トに反応しますので、

                   時々、どう感じたか、相手の表情をみて

                   聞いています。聞く私の気持が相手に伝わると

                   逆に質問してくれます。「自分の人相はよくないの」

                   「ストレスをためこんでいてはいい顔にならないよ」

                   「40歳になるまでに自分の顔に自信をもたないと

                    いけない」ある米国の大統領の言葉。

                    こんなやりとりを過日しました。

                    ストレスとどう向き合い、克服していったらよいか

                    少し視点を変えて一緒に「成熟した大人の条件」

                    について考えてみました。

                   

                                     極普通の対話をしながら、彼の苦痛、ストレスを

                    共有しながら尽力すれば彼の前途に道が開ける

                    時が来ることを信じています。