認知行動療法

            <注目される認知行動療法(CBT)>

 近年日本では、年間3万人を越える自殺者が出ており、その中の90%以上の自殺者の背景には

精神疾患があり、その内訳では、かなりの割合をうつ病者が占めています。 その対策では

アメリカ、イギリスがCBTで実績を上げ、特にイギリスでは、国策として力を入れています。

   日本でも、CBTが公的医療保険の適用の対象として認められるようになりましたが 、実際は

まだ専門医が不足していますし、ある精神科医によりますと、時間をかけてCBTで対処しているよ

りも 従来の投薬中心の治療の方が 収益がよろしいそうです。30分CBTで対処するより、投薬

中心の診療で3人 診察した方が得策とのことです。

   しかし、仮にうつの人が一旦職場復帰しても、その半数は再発すると言われています。

その後回復した話は、殆ど聞いていません。逆に同僚で自殺した人のことを鮮明に覚えています。

毎週通っているNPOで活躍している青年のように、もっと多くのうつで苦しんでいる人がCBTで

救われて頂きたいと願っています。     その青年がどうして復職できたかについて述べますと、

主治医の指導を通して、自分が落ち込んだ時に、その認知の歪みを客観視でき、自力で立ち直る

コツを習得していたからです。

                      <私が認知行動療法(CBT)に関心を持った契機>

    私がCBTに関心をもつに至った契機は、カウンセリングの研修を受けていた時のエリスの

                              論理療法(論理情動療法)でした。 

一般には、悩みを引き起こすような出来事があると、それに伴って様々な症状が発生すると

考えられます。 しかし、

彼はそのような症状は、直接出来事から発生したものでなく 、問題は出来事を個人がどう受け止めた

のか (認知の仕方)によって 、症状が発生したり、しなかったりするものと考えています。

ですから彼は、「思考を変えると感情が変わり、感情が変わると行動が変わる」と述べています。

従って何か失敗して落ち込んでいるとき 、その否定的認知の仕方に焦点を当て、認知

の歪みの論破に努めます。 この手法は、認知療法と類似しています。

       ▲ 両者の相違例    レストラン内の食事の注文

 論理療法   なかなかもって来ないからといって怒るなよ。順番だから待たないと。

          物事の道理を説いて相手を諭しています。

 認知療法   こんなに客が来ているのだから そうすぐには持って来ないよ。

          視点を変えることで相手に気づかせる。 この手法の代表はデュディス・ ベックで

          この例のように対話事例では、とても コ-チングに似た手法をよく使用しています。                

   ◎以上の論理療法と認知療法は認知行動療法(CBT)に統合され、共に「自分は---

 でなければならない。それに失敗した者はダメな人。生きる価値がない。 」と自分で自分の

 首を絞める人に対して 歪んだ認知の再考を促し、冷静になって再出発を促す支援を

 目指しています。

 

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   ▲ エリス氏の挿話 「若いときの悩み        

                   と彼の行動力」                   

、  若いとき自分は異性にもてないときめつけ

   悩んでいたそうです。しかし、自己の信念

   に忠実な 学者らしく、実際に街頭に出て

   色々な女性に当ってお茶に誘ったところ  

   何人か応じてくれた女性がいた そうで、                                 

   その中の一人と結婚したそうです。 

 

 

 

 

       <認知行動療法の出現までの過程>

    精神分析療法からCBTに至るまで私の注目する視点に立って各々の療法について

   述べていきます。

           ▲ 精神分析療法

この手法は、19世紀末フロイトが試みたもので、「自由連想」、「夢判断」などにより、心に問題を

抱えた患者の無意識の世界に働きかけて、無意識の意識化を目指す方法をとっていました。

氷山の上層部と同様に、我々の心の世界でも、意識の世界の割合は、非常に少なく、全体の

わずか10%程度とも言われています。 ですから残りの90%を占める無意識の世界の解明に

挑んだフロイトの 先駆者としての功績は大きいと思います。

    「無意識の意識化」とは、患者の症状に関わる言葉が出てきたことを意味し、これを手がかりと  

として患者の過去の不快な外傷体験や満たされていない欲望が無意識の中に抑圧されているのを

言語で開示することで無意識の感情体験等を自ら理解することで治療の突破口となり得ます。 

   この意識化する過程で治療者は、本人の様々な心理状態を分析します。この過程で、本人は

何らかの抵抗をします。思い出すと心が痛みますので沈黙したり、話題を変えたりします。

この抵抗原因の分析で本人の抑圧や自己防衛の特色が分かります。

   また、感情転移といって、患者は、治療者に対して個人的な感情等を治療者に向けてきます。

この感情の転移は、本人の父母に対する未解決なまま残っている感情、願望を表現することが

多いのです。 これを分析することで本人の幼児期の親子関係を知る手がかりとなります。

    以上のような分析を通して本人の不合理な抑圧や自己防衛、症状の意味を解釈して説明

します。この解釈を本人が受け入れ洞察することで症状が消えます。

    フロイトの精神分析については、治療者の主観的解釈の傾向が強くて、治療過程の

エビデンス(科学的根拠の実証)に欠けているとの指摘がなされています。 また治療に長くかか

 るとの指摘もあり、かってのこの心理療法の隆盛は影を潜めています。 

しかし上記の無意識の意識化へのかれの洞察は、現実にカウンセリングをしてみて色々と参考

になっています。 特にメンタルに障害のある人々については痛感します。

つい最近の発達障害の青年のカウンセリングでも、どうしても来談者中心のカウンセリングだけでは

クライアント の心の中を知るのに限界を感じます。フロイトのいう幼少期の家庭の性格形成のこと

を知る必要性も痛感しています。

 

              ▲ 来談者中心療法

 

  この手法の提唱者は、日本でもよく知られている

 カ-ル・ロジャ-スで、1940年伝統的なカウンセリングを指示的として批判し、それに反発して

非指示的方法を提唱しました。 この方法は、前者と異なってカウンセラ-が、クライアントの言ったこと

に対して、自分の枠組みの中で、判断、解釈、評価、指示などをしないで、感じたり、思っていることを

自由に話させる方法です。 1951年の「来談者中心療法」でその理論について述べています。

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    来談者中心療法の理論

      A   人間観

 人間には先天的に自己実現への傾向があり。

 それは、成長、自律性への傾向があって、よくなる

 力が内在している。

      B  パ-ソナリティ論   

  (1)   人間には、自己成長力が内在する  

 

    (2)    自己概念(本人が自己をどう見ているか)が自己の成長過程で

       形成され自己の行動の中軸になっている。この自己概念について、ロジャ-スは 

       フッサ-ルの現象学の立場より「客観的事実よりも、本人がどう 受け取っているかの心  

       的事実の受け止め方の方が重要である 」

       と述べています。わたしは、この言葉のもつ重み を時々痛い程

       感じています。 その人の行動をほめても、劣等感が強い人には通じないからです。

       就労支援で時々遭遇します。 てすからこのような定着した認知の歪みに対して

       認知行動療法を使うと効果が期待できます。

 

              C        リレ-ションづくり( カウンセラ-とクライアントの信頼関係)

   両者の関係は、フロイトの精神分析療法の医師と患者という上下の堅苦しい関係でなく、

  ロジャ-スは、クライアントの人権尊重の観点から対等な関係づくりを目指しています。

      それを土台にして話しやすい雰囲気づくりをします。

  その場合、私はセッションの前に心理教育でその辺のことを説明し相手の理解を得たいと

  考えています。(私の目指すカウンセリングの心理教育参照)

    その時に、狭いカウンセリングの枠に縛られないでコ-チングの承認スキル、アサ-ションの 感謝

  スキルなども使用すると、雰囲気がなごむと思います。「それはよい着想てすね」とか

  クライアントが「そこまで分かって頂いてうれしいです」(アサ-ションのことを知らなくても)

    そういうようなやりとりがあると、両者の心理的距離が縮まって良好な関係が進展する

   と思います。  また、時として両者間の話がずれたり、クライアントがいい足りないことがあると

   信頼関係はうまくいきません。そんな時にそれらの気配を感じたなら、「話がずれてませんか」

   「何か違和感を感じませんか」とか、「言いたいことは話せましたか」の質問をすると

   軌道修正ができて信頼関係の回復につながります。

         

         D  積極的傾聴

  (1) カウンセラに求められる基本的態度

     a  自己一致

       カウンセリングをする時になって特別に「カウンセラ-ぶる」のではなく、平素の素顔の

       自分でクライアントと接すること(偽りのない自分)を意味しています。

     b 無条件の肯定的配慮

       クライアントがどんなことを言おうと、どんな態度であろうと 相手を暖かく受容すること

      (トップぺ-ジのカウンセリングの理念参照)

            「この暖かく受容する」は私が一番ロジャ-スの人間性について注目する箇所です

       これは、多くのメンタル障害者にかれが関与して得た臨床現場のきびしい愛の

       体験から出た言葉だと思います。この言葉「暖かい---」は実行しようとすると

       そのハ-ドルは高い事があります。 私が認知行動療法に接近したのは、この高さを

       強く意識したからです。  下記の例がそうです。  

         C     共感的な理解      

      「 共感的理解とは、その人の主観的な見方、感じ方、考え方をその人のように見たり

      感じたり、考えたりすることである」とあるテキストに出ています。 頭で理解している

      つもりでも、実際に一身上のハンディをもった人と接していて「あんたみたいな人に

      俺の気持ちがわかるのか」と逆差別されると、最初の頃は当惑しました。

      しかし、ここからがカウンセラ-として再出発するよい転機になります。

      新しい対処法を探究するきっかけになりますから。

     (2) 傾聴の技法  

 

       養成講座できびく指導された単純応答(うなづき、相づち、繰り返し)、       

       感情への応答、要約して返すなど。   

        しかし、大事なことは、すでに述べましたリレ-ションづくりに留意することです。

        このことは、今年の4月22日のカウンセラ-のブログで掲載しています。

        セッション中に、自分は、相手に対してどんな関わりをしているか、視点が自分に

        あるのか、相手にあるのかということ、さらに第三者からみて両者の心理的距離は

        どうなのか。 こんな複眼的見方をもつことが信頼関係にとって不可欠です。             

        どんな心理療法を使うにせよ傾聴に関する上記の(1)、(2)は基本として大事です。

       ◎  なおロジャ-スは、面接場面を録音で公開して技法のレベルアップに務めた

        業績も彼の功績として評価されている。