認知行動療法(来談者中心の問題からCBT)

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              <来談者中心療法の問題>

 

 ロジャ-スの提唱したこの方法の非指示的な特色は、   

クライアントの内在する自律性、自己成長力に信頼しているいることを前提にしています。

しかし、すべてこの手法で機能するわけではありません。       

 

ある事柄について未経験、無知な人に対しては教育  

指示、アドバイスが必要です。 

特にメンタルの上で知的、情緒的な支障のある 人には

この手法のみでは機能しないことを 私自身日々の就労支援で実感しています。なお、

カウンセリングの補完的な手法としては、メンタルで支障のある

うつ、神経症、発達障害などの人々については、これから述べます行動療法

認知行動療法(CBT)などで対応する必要性があると思います。 

 その他の補完的手法としては、私のカウンセリングの手法の特色で述べています

 ように私は必要に応じてコ-チングの手法も併用してメリハリの効く対応をします。 

 

                   <行動療法>     

  精神分析療法や来談者中心療法などの理論は、臨床経験を土台にして優れた洞察によって構築

 された人間観 に基づく理論ですが、1950年代に入るとそれらを批判して学習心理学ので

 実験、観察から得た知識、デ-タを導入した科学的心理療法として行動療法が台頭して

 きました。

 この心理療法は学習理論を基礎としています。 例えば自然から採集して得た食物の

 ような「快」を感じるものもあれば、不安、恐れのような「不快」を感じるものもあります。

 ウォルビは、行動療法を「不適応行動を変容する目的で、実験的に確立された学習の諸原理を

 適用し不適応行動を減弱、除去すると共に適応行動を触発、強化する方法である」と

 定義しています。

 不適応行動の変容とは、一度学習した不安、恐れなどの不快な症状を弱め、解除することです。

  そのためには、色々な技法によって再学習することで症状を解除しようと治療を試みます。

  なおこの療法では、基本的には、クライアントの言語の表出、表情、動作に留意し 

  それらの特性の把握に努めます。

  来談者中心療法のような クライアントの心に響く情緒的関わりは、余りして

  いません。 客観的にわかる エビデンスに焦点があるからてす。

 

    ▲ 行動療法の技法と理論

         (1) レスポンデント条件づけ法

   有名なパブロフの犬を使用した条件反射、つまり刺激 に対する反応の学習の結果が

  恐怖症のような マイナスを生じる 場合、前述のように 

    再学習によってその症状を 弱め、なくすことを目指します。

 

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  高所恐怖症の人に対しては、徐々に低い所から

  高さを上げ、恐れを緩和して慣れさせ、恐れを

  なくすという手法です。 

  この手法と並行して        

  イメ-ジトレ-ニング、リラックセ-ションの手法も

   使用します。 従って教示、操作の色彩が

      特徴です。

 

 

     (2) オペラント条件付け                                アザレアの花畑

 

   オペラントとは道具という意味です。

   これは、ソ-ンダイクが飢えた猫を箱に入れて偶然

   てこを踏むと扉が開いて外へ出ることができるという学習が基礎になっています。 これを応用

   してアザラシ、イルカなどに一定の行動をすればほうびとして餌を獲得できることを学習させる

   ことも出来ます。 もちろん人にも応用ができモ-ティべ-ションを上げる手段として使えます。

 

             (3)  社会的学習論

 

   この学習論を代表するバンデュ-ラ は、人は自分で経験しなくても

 自分の周りの人々の行動や結果を観察することで新しい行動を取り入れたり 、従来の

 自分の行動を変えたりすることができるという観察学習の成立過程を

 理論化しました。 その例がモデリングです。

    彼は実際に子供たちに「暴力をふるう映画」をみせて、それによってどんな影響を

  受けるのか観察しました。 そこで彼が注目したのは、単に刺激に対しての反応ではなく、

  子供らがその映画の登場人物の振る舞いを「どう受け止め認知したか」でした。

  つまり、従来の行動理論を

  批判し て新たに刺激と反応の間に「認知の働き」を組み入れた理論を展開したのです。

  その結果1970年代以後認知の要因を重視する行動理論が次々と提唱され、認知行動療法への

  展開が進展していきました。 彼は上記の行動療法がなおざりにしていた「クライアント

  との情緒的関わり」に着目してべックの認知療法への橋渡しをしたのです。 

  クライアントの認知に働きかけることで行動にインパクトを与えることができます。               

            ▲ 行動療法の長所と課題

  (1)エビデンス(実証的な裏付け)が明確である

   a  治療対象は、心理状態(感情の動き)でなく、不安、恐れなどによって起きる行動に対して

      客観的観察と測定ができる。

   b  治療目標がクライアントにとって分かり易く、治療効果について具体的な数値を示していて

      治療の進捗状況が分かる。 

     (2)   治療期間が比較的短い

   以上のような長所はあります。しかし、すでに述べましたように認知のことにつきまして

   うつのような「認知の歪み」に対しては、行動療法では、治療が困難です。 

   ですから認知療法の助けが不可欠です。

     

                               < 認知療法 >

   認知療法は、アメリカの心理学者、精神科医のア-ロン・ベックが開発した心理療法で、

   様々な出来事に対しての人々の受け止め方を認知の問題として重視し同じ出来事も

   認知の仕方次第で不快な気分や不適切な行動を引き起こします。 

     例  「門限過ぎて姉妹が帰宅した時の母親のきつい注意に対して」

   母の言い方に怒りを露わにしてすぐ部屋にいった妹、母の気持ちを察知

   して謝まる姉。 というように認知の違いで感情、行動も異なります。

     ところで、この認知は、本人の幼少期以降の生育歴の中で「その人なりの信念」

   として形成され、

   それを基礎にしてスキ−ム(考え方のくせ)となります。その結果 本人にとって

   かなりのインパクトを与える出来事(入試の失敗など)に遭遇しますと認知の歪みが

   生まれ、抑うつ的症状(気分が落ち込む)になり易くなります。   

   例えば幼少期から親や兄弟から、さらには教師から人格を否定されるようなことを

   言われ、ことあるごとに他者と比較され続けると「自分は無能な人」という

   自己概念が定着し、大人になっても引きずっていきます。 健常者でもそうですから、

   メンタル上ハンディのある人々でしたら、なおさらマイナスの自己概念を払拭する

   のは困難です。  

   実際にそのようなタイプの人々に接してみて、相手を褒めても白けてしまって効果が

   ないこともありますし、ましてや失敗などインパクトを与える出来事に直面した時は

   「認知の歪み」は克服し難いものになります。 このようなハンディのある人と

    接していない時は、ただマニュアル的な「認知の歪みを正す」ことしか

    考えませんでした。 

     しかし、まだ経験が浅いとは言え、就労支援現場で感じたことは、

   「歪みを正してあげよう」などでなく、

   まずは、相手の心情をよく見極めて、冷静になって自分の心をほぐすこと。

    これがあつてこそ相手と痛みを共有し合い「認知の歪み」のことをほぐす道を歩む

    ことができると痛感しました。具体的なカウンセリングの手法は、私にとっては

   伊藤絵美先生の 「ワ-クショップの事例」が参考になります。

   クライアントにとっては、「歪みをほぐす」とは、気づきによって歪みが解消することを

   意味します

   **なおこの認知の歪みについての対処法は、新しいサイドメニュ-の「CBTの特色」を

   新設した後の掲載記事の再構成法、コラム法をご参照下さい。      

    上記の認知の歪みの発生する過程についてベックが示した図を下記に掲載します

                    

          ▲   ベックの認知の歪み理論

 

   *1     自動思考----------------→抑うつ状態   

                     抑うつ認知の

                     3大徴候           

                                                            ↑               

     ネガティブなライフイベント →   本 人 ←    体系的な推論の誤り 

 

    *2 (認知操作)                  

 

        抑うつ的スキ-マ

 

            幼児期からつくられた 

                                    潜在的信念 (認知構造で深層的・永続的)

 

 *1 の自動思考とは、 自分の意志とは関係なくその都度意識に急に飛び出すもので、スキ-マ

   (考え方のくせ)から自己否定のつぶやきが出るなどです。

   さらに失敗体験にあえば その思いが強くでます。               

   うつ認知の三大徴候とは、自分、世界、未来に否定的、悲観的に受け止めることです。

     これが感情障害の基礎にあると考えられています。 世界というのは 

     自の生活環境のこと

     例えば、雇用、景気の動向など。

 

         *2 「体系的な推論の誤り」は、まさに認知の歪みの典型的なものと言えます。

 

       例1 恣意的な推論  彼女に食事に誘っても断られ、絶交と落ち込んでいる。

          その根拠もないのに。

        例2   過度の一般化  些細なことを過度に一般化する。

        ある会社の就職試験に失敗して他の会社も駄目だと思い込む。

    例3  完全主義的、二分法的思考  好きか嫌いか、完全か、不完全か。

     生真面目な人の中にこんなタイプの人を見たことがあります。

     真面目過ぎて堅さ故に他者に好かれずうつになりました。

 

       例4  拡大解釈と過小評価

        些細な出来事を大きく受け止めて解釈して落ち込んだり、逆に重大な

        それを自信ある場合には、鼻であしらって小さく評価す。

       例5  自己関連づけ

                  同僚が 休日旅行先で災害に会った場合、本人の 意志でいったのに

            がやめよと言えばよかったのに。というように自分に関係ないことまで

          関連づけて考えてしまう。

              例 6  選択的注目 

          着任早々の上司が10名の部下のたった一人が自分の提案に

           に反対したことで自分の指導力に自信をなくして落ち込む。

           全体をよくみて検討すれば何でもないことでも、たった一人に

           心が注がれて結論を出してしまう。

           ◎ 以上の各例は、いずれも上図のスキ-マ(考え方のくせ)と共に

           自動思考の奥底で大きな影響力をもっています。

 

           ▲ 認知の歪みの対処法   大野 裕先生の「こころが晴れるノ-ト」より

 

  これに関して日本のCBT研究の代表的権威者の一人大野先生は、この著書で

  分かり易くてとても参考になります記事を書いてみえますので紹介します。

   認知の歪みのために

  悲観的になっている人々について次のように述べてみえます。

  「考え方をかえてみると気持ちが楽になりますとお話すると、やはり 自分の考え方が 

  間違っているからうつになったり不安になったりするんだと考えて      

  自分を責める人がいます。(中略)ここで問題なのは、あなたではなく、あなたの考え方

                                         です。」 

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    マリ-ゴ-ルドの花畑

 

  ここでは、「どうして歪んだ考え方になってしまったのかについて自分の外側から

   視点を当てて、落ち着いて考えてみなさい」と促しています。

   さらに続けて先生は「よいか悪いかを判断しようとしている

   のではありません。  ストレスがたまってくると、ついよい悪いで

   判断して自分を責めたくなったり、人を

   責めたくなったりします。(中略)大切なのは、あなたのストレスを軽くする

    ことです。  そのためには、あなたの考えをやわらかくすることです。」

     抑うつ状態になって理性、感情の働きが鈍っている中では、いきなりマニュアル的に

  認知の歪みを修正しようとしてもクライアントには通用しません。 ですからまずこころを

  ほぐすことから始めます。 緊張をほぐしなから大野先生ご指摘のように考えを

  やわらかくします

   それは、わたしが指摘しましたように、自分の考え方のくせに気づいてそれか 

  ら解放されることです。 

  続けて先生は「考え方をやわらかく変えたとしてもあなた

  のまわりのストレスフルな状況が変わらなければつらい状況は続くでしょう。

  ですからあなたが困っている問題を少しずつでも解決してストレスを  

   軽くしていくようにします。

   そのためには、あなたの気持をまわりの人々にきちんと伝える

   ことも大切です。」 

    この「きちんと伝える」とは、そうすることで言いたいことをため込まず、

   発散する効果がありますし、また聞いている人の理解をうることで

   すっきりすることがあります。

      以上の抑うつ状態の人に対して、クライアントの気持の受容を大事に

   していることが分かりますが、すでに私が来談者中心療法の問題で述べまし   

   ように、この認知療法

   それを土台にしている認知行動療法が自力では回復できない

   クライアントに対して、教示的なサポ−トをする必要性もご理解して頂けたら幸いです。

       

 

   別ぺ−ジでその手法の特色のことをより詳しく要点をお話し致します。

 

      ▲ 認知療法の長所

   1  問題点が明確に指摘できてわかりやすい。

     すでに述べました伊藤先生のワ-クショップの事例、ベック氏のそれ

     などでわかります。 心理教育、セッションを通して「何が問題で

     何をどう解決すべきか」をクライアントが理解し易い                  

     2       従来の心理療法と異なった新しい手法、リレ-ションづくり

       クライアントの効果ある動機づけ

        上記の心理教育、コ-チングに近いカウンセリング

        リラックセ-ション、イメ-ジトレ-ニング など行動療法の技法

        宿題として日常の心の記録(DRDT)

               その他諸々の長所にいては、別のサイトCBTて述べます。

 

            <認知行動療法 (CBT)の成立>

   認知療法と行動療法は、1990年代にイギリスのクラ-クとサルコフスキス

  によって統合され体系化されました。

  両者は、車の両輪のように相互に補完し合う関係にあり、各々の特性を

  活かし合って機能しています。

  その例1   自分の認知の歪みに気づくと行動も変化します。その際前述の

         行動療法のイメ-ジトレ-ニングなどでモチべ-ションを高めます。

  その例2    体を動かすと頭しが軽くなり、ストレス解消に効果 があります。

          例えば、あるNPOで私も実行していますし、もと同僚がうつに

          罹っていた時の妻も実行していたキャッチボ-ルがそうです。

          私の目指すカウンセリングの(3)メンタルのことで強い関心を

          抱いた契機をご参照ください。