認知再構成法 基本スキル4

            認知再構成法

  

      この方法は、コラム法とも呼ばれ、過度に否定的感情、気分と関連する

    認知(考えやイメ-ジ)を再構成するためのスキルのことをそう呼んでいます。

    すでにアセスメントシ-トと心理教育で述べましたホットな認知と同じことなの

    です。再構成法は、認知を修正して現実に即した適応的思考を目指します。

      コラム法とも呼ばれるのは、5つとか7つの項目の表にその時の状況、感情

    自動思考などを記入する記録表のことをコラムと呼び、コラム法のことを

    DRT(非機能的思考記録)とも呼んでいます。

    DTR= dysfunnctional thought record                 

       この方法は、セッションの構造化で述べましたようにまさに基本スキル

    1 から3までの総まとめとして登場する認知行動療法の中の大変大事な

    方法です。

         ▲   認知再構成法の留意点 

  

    1   この方法の心理教育を十分して後、クライアントのぺ-スに合わせて    

      進めていく。                                                                            

   2   クライアントが認知行動療法の基本モデルをよく理解しているかチェック

      してから導入する。

   3   いきなりコラムシ-トを渡すのでなく、いつもの対話をしてから所定の箇所

      に記入していく。

   4    この方法の習得のためには、かなり練習を要することを本人に理解して

      もらう。 この経験者の例を話して自覚を促す。

    5    いきなり認知の歪みの修正を目指すことを強いるのでなく、認知の

      選択の幅を広げるという話し方をすると適応的思考へ本人は進み

      易くなる。( この「認知の選択」は、アセスメントシ-トについての記述の

      「認知と行動の選択」の箇所にも出ています。)

                

                           SU165.JPG

 

        ▲  コラムシ-トの項目例

   

      @ 状況  A 感情   B 自動思考   C  その考えの根拠

      D  その考えの反証   E 適応的思考 F 心の変化

  

    @は、出来事の状況説明です。 A、Bは、その時の強い感情、その感情

    に関わるホットな認知(自動思考)です。 思いつくままにいくつか出して

    その中からきわだったのを選んで記入します。

     AとFはその時の心境程度、心境がどう変化したかの程度を%で

     数値化します

       ▲   認知再構成法事例   ある職場の上司と部下

        @ 状況 ある社員が仕事のミスで上司にきつく叱責された。 

        A  感情  a 怒り 60%  b 不安 70%   c  情けなさ 70%

              B  自動思考    a  言い方がひどいと思った。

                      b  自分は、この上司の下では、働けないと

                                          思った。

                      c   見下されたと思った。

         C 考え方の根拠    

           a  大声でどなられた。                         

           b  自信を喪失した。

           c 言い方で傷ついた 

                D 考え方の反証   

                  a  自分の方でもミスしたことの落ち度があった。

           b   直後の面談で自分が期待されていることが分かった。

           c   仕事ぶりを叱責されたのであり 、人格まで否定していない。

                 E 上司の忠告を受け止め、気分を入れ替えて問題点の克服に

            努める。

           F 怒り、不安、情けなさの気持が減少した。

            a  60%→20%      b  70%→30%   c 70%→30%

      ◎  なおこの後の本人のフォロ-として自分がカウンセラ-なら

       仕事の上の問題点とその克服策としてどんなことを実行するのか

       宿題として出し、後日面接して 本人が望むなら、上司との関係の

       改善を意図するロ-ルプレイをすることも一策と考えます。

          静岡で「発達障害」の研修を受けた際にもこの手法を治療法として

        使用することを講師が指摘しましたが、自分が上司の立場に

        立ってロ-ルプレイしますと、上司の感情が強く出た時の気持が

        理解できると思います。

  

           ▲  認知再構成法について私から言いたいこと

       

         1   自己の認知のくせ(スキ-マ)にに気づくこと

         上記のような訓練をセッションや宿題を通して何度もすることで

          自分の認知の歪み(スキ-マ)に気づくことが出来ます。

          上記の事例の怒りも「XXすべきだ」という認知のくせから

          くることがよくあります。

         2   このような認知再構成法に臨む場合のクライアントについて

           自己分析がなるべくうまくいくためには、心と体を整える

           ことが必要です。  事前に少し体を動かしてみるとか、

           音楽を聴くとか好きな飲食物をとってリラックスするなど

            行動療法を利用すること。

         3    この方法をどの人でも適用しようとする考えは排除すること。

            この方法の目的を スキル1の双方向のカウンセリングで

            達成できるなら、それでよいということです。 

             この方法及び事例を説明したのを理解できて応用の効く人も

            そうです。逆にマニュアル的理解をしてもクライアントの心の

            ケアをその時の状況に応じてできないと意味がありません

      

          ◎ DTR( 週間の活動と気分の記録表)

                DTRは、すでにこのサイトの初めに述べましたように非機能的思考

        の状態のとき、つまり気分が落ち込んで不安定な状態の中で

        思考力が十分回復していない時の記録のことです。

         この箇所の記事は、大野裕先生の「うつと不安の認知療法自習帳」を

         参考にして述べています

         このDTRは一般に宿題として出され、CBTの方法の習得訓練に

        不可欠です。

        この記録表の作成の目的は、うつのような場合、精神的な疲労が蓄積

         されますと、どうしても生活のリズムが乱れますのでそれを立て直す

         ことにあります。 この表をながめていますと自己の外在化が可能に

         なり、客観的に自己を観察してどんなことが、気分に影響しているか

         理解でき、次の活動目標を目指す際の参考になります。

            さらにセッションの際、カウンセラ-に提示して一緒にながめて

         対話していますと、さらなる気づきが生まれ、適応的思考に

         近づくことができます。 そして何度もこのような表を作成して

         認知再構成法のコツを習得゛しますとセルフカウンセリングができ

         るようになります

         ▲  ある社員の職場復帰直後の記録表例

      

         作成の際の留意点  

         a  活動  本人の気分に関わる比較的意味あることを書く。

            職場では、本人のする仕事、周囲の対人関係で本人の感情

          の動きに影響を及ぼしたことに注目して書く。

         b  気分 0から100%で表示する。

          c  一週間終了したら活動と気分との関係について検討する。

    

          事例 月曜日の活動ど気分についての記録 表

         AM 6時~           起床 洗面等  気分         30%

                      7時~            朝食                  40%

                      8時~            出勤                   40%

                      9時~12時        仕事                   30%

                PM   12時~            食事、休憩              50%

                       13時~15時     仕事                   40%

                       15時~           上司との面談             50%

                      16時~           仕事                  40%

                       17時~           帰宅                   40%

              18時~           くつろぐ              40%

                       19時~          夕食                50%

                       20時~         家族との団らん                60%

                        21時~          TV                               60%

                        22時~         入浴その他            70%

                        23時~              就寝                60%

                     午前中の仕事の30%は、同僚への気疲れのためです。

           昼の仲間との交わりでホットしたため20%上昇しました。

           そのことが仕事では、午前の時より上昇しています。

           上司の心遣いで安心して50%になりました。

          

           仕事を何とかこなして帰宅後、家族との団らん、くつろぎ等が

           心の癒しになって気分の数値が上がっています。

           以上のことから対人関係が良好なことが本人にとって

           心が癒される大事な要因であることが分かります。

           なお、午前の仕事で30%の数値の要因の本人の気苦労の

           ことをカウンセラ-に話すと、対話の中で「--しなければならない」

           という本人の考え方のくせ(スキ-マ)に気づくことができます。

           このような気づきの積み重ねが認知の歪みの修正になります。