5月20日 改正安全衛生法案 「ストレスチェック制度の創設」
5月20 日 改正安全衛生法案 「ストレスチェック制度の創設」
この件につきましては、すでにブログで紹介しましたように職場の労働者のストレス増加に
伴ってメンタル不調に陥る前に対処する施策として労働者の心理的負担の程度を把握するため
医師、 保健師等による検査の実施が事業者に義務づけられることになります。
この改正案については反対意見が出て、国会に提出前に厚労省の当初案の修正が行われました。
その修正の留意点は次のとおりです。
① 従業員50人未満の事業所については当分間努力義務とされます。
② それ以上の規模の労働者のストレスチェックの受診義務が削除されました。
(検査を受けたくなければ受診しなくてもよいということです。)
チェック制度とは名ばかりの体裁を整えるお役所仕事の感じがして、「こんな対策で早期うつ
防止できるのか」と何となく怒りを覚えます。真面目に働いていて「うつになっていく人」は、心理
相談で指導して頂いたF先生によると「なかなか自分の病識を認めないとのこと」
多分こんな検査で救済するのは困難かと懸念します。
こういう類の人々の救済をどう考えているのか、政策立案者、それを支持する政治家諸氏に、
聞きたいです。どうせ悪化してからクリニックにいっても、投薬の対症療法では効果はあまり期待
できないのが現状。そこからどう脱却しようとするのか全く見えてこない感じです。
③ ストレスチェックを実施した場合には、事業者は、検査結果を通知された労働者の希望に
より 医師の面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いた上で必要な場合には作業転換、
労働時間の短縮その他の就業上の措置を講じなければならないとしています。
このような定めは長時間労働の労働について規定されています。 しかし、心の症状は
質的に異なりますので、その辺の配慮はどのようにすべきでしょうか。
それから医師の面接指導のこと。大企業にはそのようなメンタルの指導のできる医師はいるか
も知れません。でも中小企業の医師にそんなことのできる医師はまずいませんし、外部に依頼
することもないのではと思います。
④ 個人情報の保護 検査を受けた労働者の同意を得ないで当該労働者の検査の
結果を事業者に提供してはならい。
(これがどれだけ守られるのかも気になることです)
◎ ある弁護士からの指摘
ストレスチェックの受診を就業規則等で定めてその受診を業務命令として
労働者に命じることができるか ?の問題提示
それに対してその弁護士は、「頸肩腕症候群」に罹患している労働者に対する
指定病院の受診命令の拒否等を理由とする懲戒処分を有効と判断した判例
(電電公社帯広電報電話局事件)を例にして「労働者の健康障害を防止するための
ストレスチェックを実施するだけの具体的必要性がある場合には、これを業務
命令として出すことができることになりそうです。」と述べています。
◎ 私の見解 この弁護士は、具体的必要性という一定の制限をおいて
「業務命令」として出せる可能性を示唆している感じがしますが、
上記の個人の身体の疾患とメンタルの問題とは、質的に異なりますし
このような検査は、労働者のプライバシ-、配転、人事考課など処遇にも
影響しますので、会社側の一方的な命令と受け取られるような決定は避け
ないと、かえって、社員のためと思ってすることが、社員の反発を買い
職場のストレスの助長という皮肉な結果にもなりかねないと私は考えます。
「伝家の宝刀」は細心の注意をして扱うべきではないでしょうか?