7月23~25 日 「合理的配慮」の原点について
合理的配慮の原点は、2006年2月国連総会本会議で採択された「障害者の権利に関する条約
(略称 障害者権利条約)であると思います。この条約については、「教育と医学」2015年
4月号の奈良教育大教授 玉村公二彦先生の執筆された「国連・障害者権利条約における
合理的配慮規定より抜粋要約致します。
2006年12月、第61回国連総会において今世紀初めての人権条約となる「障害のある人の
権利に関する条約」(障害者権利条約)が採択され、2008年5月に国際的に発効しました。
しかし、日本政府は、関係する国内法の整備が遅れていたため、障害者基本法の改正、
障害者差別解消法の制定などを行い、やっと2014年1月141番目にこの権利条約を
批准しました。この権利条約の内容上の原理であり、特徴となったのが「無差別」の原理
「平等及び無差別」条項です。この条項では、「合理的配慮の提供」、「特別の措置」をとる
ことを想定としているとのことです。
<障害者の権利条約を参考にして定めた合理的配慮>
条約には「合理的配慮」の訳に当てはまる原文はなく、この日本のキイワ−ドに対応するのは
Reasonable Accomodationです。この二つの用語の解説につきましては、資料として
ディスレクシア入門(加藤醇子著 日本評論社)より引用します。
本来加藤先生は学習障害(LD)について述べて見えますが、この用語の由来とその特色について
詳細に述べられていて参考になります。
「合理的配慮」とは、1973年の米国のリハビリテーション法の中で初めて登場し、その後
1990年に制定された障害をもつアメリカ人法の「雇用上の差別の禁止」を定めた第1篇の中で
位置づけられた概念です。
その中で「合理的配慮」とは「障害者がその障害故に職務遂行上抱える様々な障壁を解消する
ための措置」指し、その措置を行う雇用者にとって「過度の負担のないもの」とされたとの
ことです。これは、「障害のある人がその障害の故に差別されず、公平に能力を評価され、
他者と同じくアメリカでの生活を営むことができる機会を保証するものです。
具体的に例示しますと、視覚障害や学習障害等の人は、PCの読み上げソフトを使うことで
資料を音読化できたり、肢体不自由の人は、エレベーターが設置されたり、車椅子が通れる
ような広さがが廊下、室内などで確保されることなどの便宜を与えることなどです。----
このように、その人がもっている障害特性が、その仕事の本質的な要素を制限しないよう
条件を整備することを「合理的配慮」とし、それが障害のある人の勤労権を守り、実質的な
機会均等などにつながると考えたわけです。この「合理的配慮」の概念は英国の障害者
差別禁止法にも入り入れられ、後にEU全体に拡大しました。
そして2006年国連総会本会議で採択された障害者権利条約第2条に引き継がれ、
労働場面のみならず教育など他の分野でも「合理的配慮」を提供しないと
差別になるとはっきり打ち出されたのです。
同条第2条では「「合理的配慮」は「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び
基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な調整であって
特定の場合において必要とされるものであり、かつ均衡を失した又は過度の負担をかさない
ものをいう」と定義されていて、1990年のアメリカ人法よりもさらに踏み込んだ
内容になっているのがその特徴と筆者は指摘しています。後述で触れていますが
障害観がこの間2006年で大きく変わったためと筆者は指摘しています。
(私はその36年間における障害者の権利擁護の意識の高揚に注目します)
筆者は、筆者はこの点に関して「合理的配慮」の概念を理解する上での重要ポイントを以下の
ように指摘しています。
◎「合理的配慮」は字面のように「理に適った心配り」を示すわけでないということ
現行の日本の障害者の差別解消に関する法律の内容をみていてそんな心境になります。
ここで「合理的配慮」の原点に言及しています。
そもそも障害をもつアメリカ人法や障害者権利条約に書かれている「合理的配慮」に当たる
原語はReasonable Accomodationと指摘しています。
accomodationには以下のような意味があります。
(1)宿泊、(航空機等の)座席。(くつろげる居場所言っていいのではと思います)
(2)便宜、助け(最近の国内では、エレベータ。ー、乗物 の際の段差への対処、障害者への
説明時に図式、絵を書いて理解しやすくする等)
(3) 適応、調和、調節 (4)和解 (3)と(4)は障害者との意思の疎通(かよいあう)
以上のことは、今の国内でよく強調されている配慮とはことなります。
それですと「思いやり」、「気遣い」、「心配り」という心情的意味になりますが、
障害者権利条約の「合理的配慮」は条文内にあるように「必要かつ適当な変更及び調整」の
ことであって「理に適った気配りや気遣い」のことでないと筆者は念を押しています。
ここでいう「必要かつ適当な変更及び調整」とは、官公庁、企業、学校等で上からの目線で
軌道修正の条件整備でなく、障害者との対話しながら彼らの意向を尊重しつつ改善して
いく姿勢、施策を私は感じます。
障害者の自立支援においても、彼らの意向を傾聴しつつ自立を支援することが、
支援する側、支援される障害者双方の成長にとって不可欠と痛感しています。
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