5月16〜17日 多様性の高い組織の作り方 粟津恭一郎先生執筆
コ−チAより配信多様性に応じた各自の視点の扱い方について
今回の記事につきましては、丁度最近日進市の障害者自立支援協議会の中で「障害者への
合理的配慮」の見直しについて発言し、その提言資料を集め検討している最中 でしたので
掲載することにしました。「今回の多様性の高い組織」について、筆者は以下のように
述べいます。経営者側から「もっと人材の多様性(ダイバ−シティ)を高めたい」という
話をよく聞くとのこと。その背景には「異なる知識や経験をもつ人材を交流させることで
過去の経験にとらわれない新しいアイディアを次々と生み出し、業績をさらに向上させ
たいという願いがあると。それに関してイリノイ大学のセドリック・ベルグが506社
対象にした研究では、人種の多様性が高い企業ほど売り上げ、利益とも高いことが
分かったと。*1
また米国の教育機関コ−ポレ−ト・エグゼクティブ・ボ−ドによる調査では、経営幹部に
於ける外部人材の割合が高い企業程、売り上げの成長率が高いとのこと。*2
また歴史の長い日本企業の中にも外国人を執行役員として迎え入れたり、異業種の
経験をもつ社員をふやしたりと、人材の多様性向上に熱心に取り組んでいる企業が多い
理由が分かると。
しかし、その一方で「途中入社の管理職がすぐ辞めてしまう」という声や、『キャリア
経験が異なる人が多いほど知識の共有など協力的行動が起こりにくい」という結果も
あるとのこと。*3
◎ そうすると多様性の高い組織はどのようにしてつくるのか?
「多様性」を高めるとは
エグゼクティブ(執行役員)コ−チングでは、「視点を変える」はよく使用するとのこと。
「視点」の意味を辞典で調べると、① 物事を観察する立場。観点。
② 遠近法で投射線(視点)か゛集まる画面の特定の一点。と出ているとのこと。*4
視点には「視点の元(立場)」と「視点先(対象)」の2つの意味があると筆者は
指摘します。「視点の元(立場)を変える方法とは、「新入社員の立場に立って
考えてみると−−」とか、「もし自分が上司だったら」のように「視点の元」となる
人物になったつもりで、「その人からはどう見えるのか」を想像する方法とのこと。
この方法は、相手のことを理解しようとする場合に特に有効とのこと。
新しいメンバーを社外から迎えた時、相手のことを理解しようと無意識にこの「立場を
変える方法」を使って相手との関わり方を考えている人もいるはずとの筆者は指摘して
います。
ところがこの「立場を変える」の方法は、「相手になったつもり」で考える
アプローチの手法であることから、相手が「自分の想像の限界を超える」場合には機能
しにくくなってしまうとのこと。
(障害者の人々の中々他人には言えない悲痛な心境がその例です。例えば一旦雇用して
いても、「君は障害者だから、この仕事はまかせられない」と言われるととても
傷つきます。そんな時でも、私が支援し、君が努力すれば君にチャンスありだよ」
との一言で本人は傷つきません。ある障害者の集会で知ったことです。)
自分の全く知らない経験を積んできた相手や、自分が知らない国や文化、宗教を背景に
もつ社員の立場になって考えるのは難しくて当然。つまり人材の多様性が高まれば
高まるほど、組織全体で「視線の元(立場)を変えて考える」方法は機能しなく
なってしまう。(まさに「障害者への合理的配慮」は国連の専門会議でも
差別解消の決議した宣言にもなかったのに、この言葉がひとり歩きし、現場の責任者も
障害者の方々も困惑しているのは誰たちの責任でしょうか?)
「立場を変えて考える方法で相手を理解することが難しくなると、「あの人はよく
分からない」「どうしてそういう行動をするのか理解できない」という不快感が
生じるとのこと。職場にこのような不快か゛放置されてしまうと、新しい人材を
「迎え入れたくない」という感情につながってしまい繋がってしまいかねない。
職場におけるこのような感情は組織で人材の多様性を高める時の障害になるとの
ことです。
(企業外の自治体の多様な人の集まるXXX協議会でも同じことです)
そこで筆者が試して欲しいと願うのは、視点を変えてもらうもう一つの方法が
「視線の先(対象)」を変える方法とのことです。
◎ 「視線の先」を変える方法とは
「視点の先(対象)」を変えるポイントは、「何に視点を合わせるか」という
ことと筆者は指摘します。その事例は、以下のとおりです。
事例 ある企業を買収するかどうかを議論する場面の例
A: この会社の買収によって得られる利益は大きい。それは−−−。
B:いや、そこまで言える客観的デ−タはありませんよ。
C:待って下さい。もし我々が買収しなかったら、競合Z社が買収に乗り出すかも
しれないじゃないですか」
この例では、3人同じ買収案件で話しているものの、各自の視点は、各々別のところ
にあるのが問題なのです。これについての筆者の見解は、以下のとおりです。
人は、大きなものをみるとき、一度に全体をながめることは出来ても、よく見ようと
すると、どこか一か所に焦点を合わさざるを得ません。同様に人は複雑なことを考え
ようとする時、全体の中のどこか一カ所に視点を合わせて考えるのてす。そのため
複数の人が集まって複雑なものについて議論しようとすると、それぞれ異なる
視点で考え発言していることがあるとのことです。
このような状況に対応する方法の一つとしてエドワ−ド・デ・ボ−ノ博士は
20年以上も前に、「視点(対象)を全員で同時に移動」させながら議論する
「並行思考」という方法を提唱したとのことです。*5
この方法を今回の事例に適用しますと以下の通りになります。
「どんな利益があると考えられますか」と全員の視点を利益のみに集中させて
全員から利益として考えられるものをどんどん出してもらうとのこと。
次に「どのようなリスクがありますか」と全員の視点をリスクに移動させて
話し合いする。このように全員が「一緒に視点(対象)を変えながら」意見を
出し合う。全員そろって視点を動かしていくことから「並行思考」と呼ばれている
とのことです。この並行思考では、様々な「視点(対象)」について一つずつ
全員で議論することによって「判断の根拠」となる材料を同時に手にすることが
できるため合意形成もしやすいとのことです。
◎この手法は、日本と異なって民主主義が発達している米国故に生まれた印象が
します。これが根付くと参加者のモティベーションも高まると痛感します。
それとアサ−ションスキルもこの種の会議で活かされるとさらなる成果が
期待できると痛感しました。
政治も障害者の理解も先進国とは言えない日本で、只先進国の進んだ
スキルを導入するのみでなく、身近な生活環境、学校、職場等で
相互の人権を尊重する風潮を築く必要性も痛感しました。
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担当:佐野(さの)
愛知県名古屋市・日進市を中心に活動する佐野カウンセリング社労士オフィスです。
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