10月20〜22日 続続 失敗から学ぶ精神障害者の就労支援

 

   10月20〜22日 続 失敗から学ぶ精神障害者の就労支援

 

   4 失敗を防ぐ臨床上の工夫

   (1) 就労前の本人向けの心理教育 

    就労する本人に向け「①障害を抱えながら働くという意味 ② 就労と疾病との関係

    ③ 就労と疾病との関係 ④ 就労に関連する対処行動(具体的行動)⑤ 離職時の

      対処行動

    ⑥ 就労時の再発予防など、就労支援を行う側と本人が就労についての情報を共有し、

      その上で就労するための当面の目標や対処行動について共通する考えに達しておく

      必要がある。

    以上の目的達成のために前述の①〜⑥のテ−マごとに筆者はきめ細かに約60〜90分程度

    のセッションで実施される構造化された就労に関する心理プログラムを実施する必要がある

    との見解です。(個々の箇所は少しわかりずらさも感じますが、要は具体的に起こり得る

    場面を想定した対処訓練で両者間のミスマッチを防止することなのです)

    特に『就労する本人の動機、ニ−ズが就労する場と合致しているのか」また「就労後の離職

    及び転職時の対処行動」については両者が共有化し、具体的に話し合う必要があると。

    (2)離職及び転職時の支援の必要性

   本人の能力不足やニ−ズに合わない職場、キャリアアップなど様々な理由で離職及び転職を

   本人は迎える。筆者によるとこの段階は、さらに支援が困難と認識しているとのこと。

   一つは、支援者側の問題である。この段階の前の就労継続支援が先細りの傾向がある。

   この段階の支援関係が希薄となっている構造があるとのこと。さらに転職となると、事業所が

   変わる可能性を含め、支援環境の変化が予測され、支援関係が切れたり、新たな関係性の

   構築時期であったり、支援が希薄である。

   またもう一点として、本人の問題として、離職及び転職はだにとっても大きなストレスで

   あり、心理的に自己肯定感を失いやすい。多くの場合、本人はじふんは能力が低いから

   或は問題があるため離職、転職をせざるをえないという思いになりがちである。そのため

   信頼できる支援者からの受容的な支持を含む心理的支援が不可欠である。しかし、支援

   関係が構造的に希薄な段階のため、本人を支える関係がないというミスマッチが起こり

   やすくそのため対象者は病気の再発のリスクがもっとも高い段階となっている。

   ◎ ここの障害者の離職、転職の記事を通読していて、就労する前のB型のような就労支援

   事業所についても、同じようなことがあり得ると感じました。例えば、理事にリ−ダ−性が

   なくワンマン経営で、障害のある利用者のカウンセリングすらできないと、

   スタッフのチ-ムワ−クが破綻して、そのつけは利用者にきてしまい、他の就労支援の

   事業所に移っても期待が裏切られ

   メンタル状況が悪化し、自殺に追い込まれた例を知っています。そこでは、国の助成金を

   受けていてどうしてもスタッフに就職の実績を上げようと焦りますが、ハロ−ワ−クや

   求人側と上手くマッチングできず、ある女性の利用者は、外の集会で楽しく飲酒して

   いたのにその直後自殺しました。人生の生死の岐路であったのです。その祝宴の席で

   隣のその女性に質問しました。「どこかの就労支援の事業所に行っている?」

   私のよく知っている所へ行っているとのこと。「そこでカウンセリングを受けている?」

   に対して「受けていません」ここでストップでした。「もう一つ今カウンリングを

   受けてみたい?」この一言を言っていたら、状況は変わっていたかもしれない」と

   未だに悔しい思いがします。

   (私に本人を救う力があるかないかは別として)

   次の筆者の忠告は支援者側の方々には、心に止めておくのがよろしい

   かと思われます。就労を支援する側は、就労支援する場合は離職と転職まで支援する責務が

   あることを支援開始から念頭に入れておくべきである。

 

       5 失敗事例から学ぶ

     (1) 働く動機の確認・共有を怠った事例

   20代の統合失調症のAさん。退院後デイケアに通い、順調に回復し、病状も安定傾向に

   あった。デイケアも安定的に通うことができ、本人、家族も回復を実感していた。当然この

   年代のライフワ−クや経済面からも就労が大きなテ−マであるが、Aさんの目標も就労が

   目標と理解していた。また、デイケアの構造が訓練型デイケアのため、病状が安定して

   くれば就労の準備性を高めるプログラムやコ−スに進む流れがデイケア集団にはあった。

   また、そういう訓練型デイケアから就労を目標にしていることをを、本人、家族もデイケア

   導入当初から表明していた。そういう意味で、支援者である筆者自身と本人は就労に

   向けて動いていくことを個別の面接等で共有していたつもりであった。

   デイケア利用が1年経過し、順調に就労ゼミなどの心理教育プログラムもこなし、短期

   (1〜2日)の試験的就労も経験し、それらの評価も良好であった。この順調な経過から

   過渡的雇用段階に移行した。本人、家族も喜んでいたが、就労初日から欠勤となり、自宅

   訪問し、本人、家族とニ−ズを確認し、デイケア利用を優先する方向となった。

   この事例は、大卒であり、知的レベルが高く、コミュニケ−ション力も問題なかった。

   筆者は本人の表現する「仕事をしたい」をそのまま信じ精査しなかった点がニ−ズの共有が

   出来なかった点につながった。初歩的な失敗である。内訳は次の通り。

    ① 大卒後の初就労ての発病から、本人には「仕事=発病」というトラウマがあった。

    ② 小学校から大学まで母親の願望をかなえる形で頑張ってきた経緯があり、デイケアの

    ゆったりした時間と場で自己を取り戻していることを自覚し、デイケアで自分を取り戻し

    主体的に生きていく方向を考えたいという希望であった。このまま働くことへの抵抗感

    不安、母親に言い出せない関係、デイケアの仲間やスタッフにも当初から表明したことで

    言い出せないことが重なり、上記の経過になった。

    ディケア導入期にスタッフミ−ティングに於いて②のことは他のスタッフから

    指摘されていた。

    就労を少し後回しにして、自分の生きていく方向を主体的に考えることを支援すべき」

    という指摘だった。これについても、筆者は謙遜に、筆者の評価技術の低さと

    対象者との信頼関係の構築能力の低さが要因とみている。

   働くという動機やニ−ズの確認を怠るという最も

   初歩的ミス」と自ら明言しています。就労支援に当たっては、まさに、働く動機とその

    ニ-ズの確認を怠ると折角就職しても、短期間で挫折てしまうことになります。

   てすから、就労前の準備期間での教育の質が問われます。

 

      (2) 適切に離職・転職できなかったために悪化した事例     

   20代の統合失調症のCさん。発達障害の診断はついていなかったが、デイケア

   スタッフの間では、固着傾向など発達的特徴を有するcさんだという評価があった。

   中学校時代から不登校があり、高校卒業後から自閉的生活が続き、未就労であった。

   保健所の紹介でデイケア利用となったが、利用当初から「早く就労したい」という就労

   への焦りともとれる強い希望があった。家族側も経済的不安からか「無理して欲しく

   ないが本人が少しでも働いてくれれば−−−」という考えであった。

   暗に本人に対する就労への圧力があった。

   そのため、本人向けの心理教育、家族向け心理教育を受講し、疾病と就労、再発防止

   等の考え方を共有した。

   Cさんの就労への強い意欲に押される形で、試験的就労を経て、病気を開示しての製造業

   への就労に就いた。3カ月程順調であったが、従業員から仕事のやり方について注意を

   受けてから、幻聴が出るようになって食事や睡眠にも影響が出るようになった。

   休息を取る間に、会社側(従業員)との調整など介入を図ったが、病状は改善されなかった。

   本人は、一旦退職し、体調を整えて新たな職場へのトライを勧めたが「この職場しか

   僕にはありません」と就労継続に固着した。結果的には同伴の受診時に休息入院と

   なり、退職となった。経過と結果から判断すれば、仕事が不適応の場合の離職方法、

   或は転職方法、悪化時の対処行動、家族の対処行動など、前述した個別での具体的

   行動の共有が十分できていなかった。特に引き返すタイミングと離職・転職への橋渡しの

   イメ−ジの共有が、本人及び家族を含めてできていなかった。

   筆者が就労開始前に基本的確認と共有を怠ったこと、また柔軟で適切な介入ができ

   なかったことが大きく影響した。

   (ここでも筆者の誠実な努力と謙虚な反省に好感を持ちました。

    対象者の職場の介入はかなり難しいと感じます。平素の職場の実態は聞くだけでは

    理解はどしても不十分。日報のようなものを書かせて、認知行動療法、アサ−ション

    時としてロ−ルプレイなどの手法を私なら使いたいです。)

    傾聴と共に本人の認知の偏りの修正、本人の気づきや努力の成果への承認(称賛)など

 

 

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