3月14〜15日 「死にたい」の理解と対応 (2) 松本俊彦先生執筆
▲ 「死にたい」にどう向き合ったらよいか
自殺念慮の質問の意義を強調しても、質問に対して「死にたい」と回答したらどう対応したら
よいか分からない援助者もいるとのこと。このような「死にたい」の回答に対しての
筆者の見解は以下のとおりです。
(1) そのような告白は誰でもよいわけでない
本人は、誰彼かまわず告白するのでなく、「この人ならば理解してくれるかも知れない」と
相手を選んでいることを受け止めるべきと言及しています。
2) 告白には勇気がいる。
筆者の見解として、援助者の多くが経験しているはずだが、自殺念慮の告白は、面接の
終了間際或は、援助者の就業時間の終わり間近や、これから帰宅しようとするタイミング
でなされる傾向があるとのこと。それに対して援助者の中には、この自殺念慮の訴えが
ある種の悪意や操作的意図からなされているとの疑いを持つ人もいるとのこと。
しかし、実際には、患者はずっと前からそのことを伝えようとしながらも、躊躇を
繰り返していると筆者は指摘します。
土壇場で後少しの時間しかない時になってやっと告白することを理解すべき
こととして 、こういうパタ−ンを当たり前として理解した方がよいとアドバイスしてます。
これら(1)、(2)の配慮は、自殺に直面している患者のこころに寄り添い信頼関係を
築く上で不可欠と思います。
(3) 告白は称賛に値する
援助者の質問に対して、あるいは患者から自発的に「死にたい」という言葉が出てきた場合
その訴えを軽視しないで真剣に向き合い、共感と支持、思いやり、そして支援を約束する
姿勢が相手に伝わるべきだと、筆者は述べています。このような姿勢を知った患者の
自己開示はさらに進みます。
自殺を考えるに至った原因が何であれ、患者は自らが現在おかれている状況を恥じていたり
人に告白しても、まともに向き合ってもらえないのではないかと思い込んだりする。
従って、筆者は、「まず、正直に自殺念慮を告白してくれたことを称賛し、自分の気持ちを
正直に語ることはよいことである」というメッセージを伝えるべきだろうと述べています。
◎確かに「告白した」ことの称賛は、本人の心に響きますが、更なる響きは、「本人の存在
そのものの承認」だと思います。その例についてすでにブログで書きました当時失業中の
53才の男性(北海道の高等専門学校を出て海外青年協力隊の経験もある)をある造園など
公共事業事業をしている会社に紹介しましたが、現場の作業にうまくついていけず、
たまりかねて私がたは注意しながら話ていても顔を伏せる有様。でも私が一言「あなたは
高価尊い」(イザヤ書)について話ました。あたはダイヤのような輝く宝石でも。
泥やほこりで輝きを失っている。自分はダイヤではないと言いつつも彼の自尊心を
くすぐった言葉でした。
がらっと態度が一変し、自分は職長のXさんのように的確に現場で作業をわりふりできる
ようになりたいと自己開示しました。彼は、対人関係がうまくなく、周囲から
将来を期待されていたのに、ボロボロになってしまった。とも語っていました。
(4) 「自殺はいけない」はいけない
筆者は、自殺念慮については、次のように戒めています。
安易な励ましをしたり、闇雲な前進を唱えたりすべきでない。
また、「残された人はどうするのだ」、「家族の身にもなってみろ」「死んではいけない」
という叱責や批判。或は強引な説得も好ましいものではない。
「自殺はいけない」と決めつけられた時点で、患者はもはや正直に自殺を念慮を
語ることができなくなる。そうなると援助者は、自殺リスクの評価が困難となり、
再企図を防ぐことは覚えつかなくなると。また、援助者の自分の信念、哲学、人生観
思想、信仰等にもとづいて「いかに自殺はいけないかを説いたり、患者と「自殺の良い
悪い」を議論することも、効果がないばかりか有害とのこと。(患者にとっては、援助者に
自己の気持ちを受け取ってもらいながら自らの「生きること」 「死ぬこと」の間で
葛藤しながら心の整理で苦悶している)
◎ このような葛藤している当人に対しての対応策としての平井孝男先生の提言
「死」も選択肢一つとして本人に考えさせる方法もあるとのことです。
これは認知行動療法でいう選択的適応に該当するものと思います。
「死」を選んだらどんな長所、短所があるのか
逆に「生きる」の場合はどうか
それらについてカウンセリングしながら本人の認知の修正へと導く方法です。
自殺念慮とはいかないまでも、リストカットの常習者は、この手法を話した後に
リスカツをやめてピアノを引くことで気を落ち着かせることができたと語ったことが
あります。
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担当:佐野(さの)
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