令和2 1・25~ OD 続2 ODの日本への導入に際して懸念されること 斎藤環先生執筆
令和2 1・25~ OD 続2 ODの日本への導入にに際して懸念されること
斎藤環先生執筆 精神科治療学 33巻 2018 3月号 星和書店より
筆者はこのテ-マの初めに次のことを述べています。
日本へのODの導入に際しての懸念としてすでに「ODの推進過程での問題」に表示された
7つの原則と12の基本要素の殆どすべての項目について、日本の臨床現場への導入に
際しては抵抗や困難が予想されるとのことです。後で若干私見を述べますが
それらの原則と基本要素は、一口で言えば「フィンランドでは、患者一人一人の人権が
とても大切にされている。」と思います。
それに対して日本では、建前は人権尊重といっても、医療現場、教育、企業現場等では
相反することが日々発生しているからです。
フィンランドでは、7つの原則の社会的ネットワ-クよる患者を含めたミ-ティングに
よる対処法、治療チ-ムによる必要な支援、全体に責任を持って関わる。
心理的連続性(患者をよく知っている同じチ-ムが最初からずっと継続して対応する)等。
これを読んでいてふとロジャース流カウンセリングを超える忍耐強い愛と叡智の結集
による力が「不確定性」に耐えうるものと痛感します。
ついで筆者は、ODの思想的側面は日本の精神科の治療文化としばしば対立すると
指摘し、最大の困難は薬物療法や入院療法を極力行わない方針に対する「不確実性
への耐性」の獲得であろうと。
この「不確実性への耐性」を支えるのが治療チ-ム、ネットワ-クの存在、
「心理的連続性」、「対話主義」(様な声に傾聴し続ける)などの原則であるとの
先生のご指摘どおりであり、このような忍耐強い愛が患者を治癒するチャンスを
与えるものと思います。
<OD導入に際しての筆者の強調点の確認>
すでにODが日本の医療文化、制度とは異質のものであることが、7つの原則と12の基本
要素をきちんと留意すれば筆者の強調点が理解しやすいと思います。薬も
入院も不要とのOD側の主張に対して、従来の日本の医療文化からパラダイムシフト
(日本の従来の医療の方法、制度を根底から見直すこと)を筆者は主張します。
全く異質な医療文化故に表面的な上辺だけの技法論にとどまればODの本来の可能性は
減殺されてしまいかねないと。
方法論を例として挙げますと、7つの原則の中の「対話主義」の説明で「多様な声に耳を
傾け続ける。ここに筆者の説く「治療的民主主義」がよく出ています。
官公庁、国政、企業等もこの言葉を爪の垢を煎じて飲む位の度量が欲しいです。
それと12の基本要素の「リフレクティング」の説明では、本人の努力を評価しつつ
今後の方針について意見交換する。ここにも、温かい傾聴と治療的民主主義を感じます。