5月31日〜6月1日 トヨタの社内研修公開 「部長1年目の教科書」
5月31日〜6月1日 トヨタの社内研修公開 「部長1年目の教科書」
プレジデント5月30号より
本日日進市内のあるNPOの事業所で今後の発達障害児などの特別支援学級で教育の仕事に
従事するスタッフをどう育成するか話題にした際、今回の事例のことも少し触れました。
以下にその記事の一部を紹介します。
トヨタ自動車では、新任管理職向けに部下との面談に特化した研修があり、新任部長向け
研修にメディアとして初の取材が許可されたとのこと。その様子を東京大学
中原淳準教授が解説しています。
「評価が下がったことをどう伝えるか」 「遅刻の多い部下をどう注意するか」
「不本意な部署移動をどう伝えるか」など、部下との面談に苦手意識をもつ管理職は多い。
特に近年は、ダイバ−シティの広がりによって、年上の部下や、外国人部下などが
増えた。その上ハラスメントなどに気を使うようになり
一対一での面談の難易度が増している。 トヨタ自動車では、2015年から管理職養成
プログラムが刷新された。新しい管理職向けの研修の通称「幹プロ」に取り入れ
られているのが、面談ロ−ルプレイを行い、部下面接におけるコミュニケーションの
手法を学ぶ「評価者訓練」と呼ばれる研修だ。
今回は、人材育成を専門とする中原先生と共に、新任課長向け研修の講師役となる
新任部長らが「教え方を学ぶ」アドバイザ−養成研修に潜入取材。
▲ iPadでロ−ルプレイ トヨタの面接指導法
1日かけて部下面接を学ぶ「評価者訓練」は、面談に必要なコミュニケーションの
基本と人材育成について学ぶ講義から始まる。
担当の講師は、人事部所属の精神科医。上司/部下 先輩/後輩の関係の中で
教え/教えられる風土」を重んじるトヨタでは多くの研修において社員が講師を務める。
研修の冒頭で講師が強調していたのが、面接時に「感じる」ことの大切さだ。
単に言葉のやり取りでなく、言葉以外の部分にフォ−カスし、相手がどう感じて
いるかに意識を向ける。(傾聴訓練です) その結果納得感が得られ、やる気
にもつながるという。
確かに「あなたはB評価です」と評価の結果を一方的に伝え、理由を説明するだけの
面接では不満は残るだろう。
「見る」「聴く」 「伝える」ことを通して「感じる/感じさせる」を実践するのが
「面談」という場なのだ。(事柄の応答でなく、感情の応答が大切なのです)
また、部下との面談に臨む基本マインド(心構え)として<講師は、下図の4点を挙げた。
<心構え>
a 自尊心を大切にする。 b 共感的に聴き、フィ−ドバックする
c 協力を求めつつ援助する。 d 上司として期待を伝える
とかく、上司は、「裸の王様」として自己認識に欠け、傲慢な態度で、部下を叱責したり、
お説教することがあります。でも部下だって長所もあり、それを引き出すことが
b の共感的につながります。
講師の説明によりますと、「共感的に聴く」とは、「言葉を聞くだけでなく、非言語的
な部分(態度、表情、しぐさ、言葉の奥に秘めた本音、 主訴など)を大事に聴くことが
大切」と講師は述べています。
ですから、せっかちな上司が「お前なにが言いたいのだ、要するに、言いたいことは、
XXXXなんだろう」と言えば信頼関係が崩れ面談は機能しません。
上記のa〜dに加えて下記の7つにいても講師は説明しています。
<スキル>
a 雰囲気づくり b 目的を明確にする説明 c 共感的に聴く
d 認める e 質問する f 説明する g 振り返る
面接の流れは、① 発言のしやすい場をつくる「アイスブレ−ク」*この意味は、
参加の氷のような緊張した硬さをほぐすこと、少し冗談でもいうことでその場の
緊張を和らげることなど。
② 「見る」 「聴く」「伝える」ことを通じて「感じる」/感じさせる」を実践する面談
③ 「やる気」をもって面談を終える「クロ−ジング」の三ステップ。
この準で予めシュミレ−ションしておくとよいとのことです。
講義の後は、3人組で面談のロ−ルプレイ演習。3人が部下役、上司役、観察役に分かれ
ケ−スを30分かけて読み込む。その後10分でロ−ルプレイ面談を行う。面談の様子は、
ipadで撮影され、終了後に3人でフィ−ドバックし合う。動画は社内の
イントラネットにアップされ、該当者がみられる状態になるという。
その後も、研修参加者全員での全体討議や講師からの講評を挟みながら、ロ−ルプレイ
演習が進められる。
▲ フィ−ドバック面談は「立て直し」のお手伝い
このトヨタの研修に参加した中原先生は、「正しいフィ−ドバックを上手く行うことは、
正しいフィ−ドバックを自ら受けることから始まる」と話す。
「部下の面談の場は、上司が部下に対してフィ−ドバックする場ですが、通常、面談は
密室で行われ、面談そのものについてのフィ−ドバックを受ける機会はありません。
しかし、フィ−ドバックは、それを受けることによって上達します。
トヨタの研修では、ロ−ルプレイという失敗が許される安全な場で、部下との具体的な
場面を想定した面談を行い、その面談についてのフィ−ドバックを受けることができます。
しかも、ipadを使って撮影された自分の姿を客観的にみるのは、それだけ
でもとても効果的フィ−ドバックとなります」(中原先生)
また、研修の終盤に研修講師が「面談は相手がやる気になって終わるようにしなければ
ならない」と受講生に説明した場面を、先生はこう振り返る。
「多くの人がフィ−ドバックを”評価を通知すること”だと誤解していますが、基本は、
「情報を提示 すること」と「立て直すこと」の両方を含んでいます。
フィ−ドバックを「評価を通知すること」だと考えると、相手にとって耳の痛い
結果を通知することでパワハラといわれそうで叱れない、はっきり言えない、
と苦手意識を持たれるかも知れません。しかし、面談は、「立て直しのお手伝いを
する場」と考えれば、前向きにとらえることができるはずです」
ここでの先生の「フィ−ドバック面談」の大事な指摘
部下への評価の通知でなく、部下の自律的軌道修正のサポ−トであるとの指摘は
関係者にとってしっかり胆に銘じて置くべきことと痛感しました。
上司、部下との間の一方的通告でなく、相乗効果が発揮できるコミュニケーション
なのです。
最後にこの部下の気づきによる軌道修正を促す例を今回の記事より紹介します。
<わがまま若手の意識を変える>
入社2年目の若手社員。目立つ仕事を求める傾向があり、定型業務や地味な仕事は他の人に
押し付けがちの部下と上司の面談例 Aは上司、Bは部下です。
A 新規プロジェクトは頑張っているけれど、他の仕事が疎かになっている。
先週もC商事のクレ−ム対応をXさんに任せきりだったよね。
B すみません。ですが、はっきり言って今は新規プロジェクトの方が大事だと
思うんです。
A 君は今後どうなりたいの?
B X先輩のように、チ−ムを率いるリ−ダ−になりたいです。
A そうか、それならXさんと同じように周りの人と協力し合って仕事を進めて
いかないと。
B そうですね。
◎ 私が感じたこと 対話がスム−スに流れていますが、二か所に問題を感じました。
Bのすみませんの後の言い訳じみた言葉 「新規プロジェクトの方が大事」自己中心的
視点についての気づきを促す質問をここでしてもよいのではとも感じました。
また、それから「今後どうなりたいか」の質問に対して、「X先輩のようにリ−ダ−
になりたい」との回答に対して、上司からの反省を促す言葉があります。
ここの箇所では、上司が反省事項を述べるのでなく、「リ−ダ−になりたければ、
今の自分について欠けていることは何か」と質問し、反省点について自ら決意表明させた
方が責任感をもって軌道修正させることになると思いました。
ちなみに、中原先生が指導される部下を動かすフィ−ドバック法は以下の通りです。
この方法としての3ポイント
① 行動を具体的に指摘する。情報を提示する際には、「どんな状況でどんな行動が何故
ダメだったのか」具体的に伝える
② 鏡のように見えたまま伝える。 情報を提示した上で、評価などを伝える場合には、
「私の目には仕事量が多すぎて、手に負えなくなっているように見えます」などと
みえたままを淡々と鏡のように伝える。
③ 立て直しのお手伝いをする。 情報を提示し、評価を伝えたら、相手の理想は
どうありたいか語ってもらう。その上で「目指すゴ−ル」と「現在の状況」との
ギャップを意識させ、解決策を共に考え、言葉にさせる。自己決定させることが大切
とのこと。
部下面接は多くの場合、密室という高ストレスの閉鎖環境で行われるため、緊張し、
とかく感情に流されてしまいがちになる。必ず事前準備してから面談に臨むべき
とのことです。
そのための留意点が上記の3点なのです。