5月6日 能力開発を脇におく
コ-チAより配信
新年度を迎え、各企業では、新規採用社員、配転等で新たな部署に就いた人々のため
現場の教育が進められていますが、鈴木先生は、「能力開発」よりも「職場環境」のことを
重視した事例を取り上げているのに注目しました。
先生は今回のテ-マに関して、社会心理学の権威者、エレン、ランガ教授の
「 時計の反対回りの実験」を例に上げました。その実験は、高齢者に5日間にわたり
25才頃に過ごした環境をイメ-ジして過ごそうということでした。
生活スタイル等その当時に合わせ、実験スタイルは、彼らを完全に健康で若々しい「25才」
として扱ったとのこと。その結果驚くべきことに彼らの視力、聴力、記憶力が改善し、
外見も著しく若返ったとのことでした。
同様な環境の影響について、鈴木先生の大学生の時、開成高校出身の友人に
「何故開成からあんなに多くの人が東大に入るのか? 何か特別な進路指導があるのか」
すると友人は、「何もない。開成に入ると東大へいくことが当たり前のような「雰囲気が
あるだけ」と答えたそうです。
先生は、「環境は、人の* ビヘイビアとパフォーマンスに大きな影響を与えています。
おそらく当人が認識している以上に」
* パフォーマンスも行動のことなのですが、これは、その行動について評価の対象になる
場合です。
それは、企業においては同様のことが言えるとのことです。(環境と行動について)
人材をうまく育成していることで有名なある企業の専務を鈴木先生が訪問した時の
先生の次の質問。 「人材の育成がうまくいっている理由は何か」と尋ねると
「新入社員が入ってくると彼らを家族のように扱うのです」という。家族だから、どんなに
できが悪くても縁を切ったりはしない。何とかなるように、とことん親や、兄弟、子供に
関わるとのこと。この会社にとって、部下や後輩を育成することは至極あたり前のこと。
(会社の)バリュ-を明文化し、そのバリューがあることをアイデンティティにさえしている
外資系のある企業。 *バリューとは、社員各自が持つべき考え方や姿勢。
「そのバリューがあることをアイデンティティにさえしている」の意味は、「自分は
社員としてこんなことをするのだ」という誇りをもっている。そんな印象を感じます。
上記の外資系企業の社長曰く「この会社で社長をするのは、ある意味とても楽です。
社員にバリューが浸透していて、そのバリュ-に基づいて行動しているから、その
仕組みを維持する仕組みもある。(そこに企業文化が根付いている)
文化を新たに構築する必要がないのは社長としてとてもラッキーです。」
鈴木先生曰く「通常企業は、個人の能力開発をしようと考えます。新人研修、OJT等----。
しかし、あえて検討してみても面白いのではないかと思うのは、"個人の能力開発"という
考え方を脇におき、環境、いわゆる「組織風土」をつくることに、もっと多くのエネルギ-を
傾けてみるということです。」
◎ 私の感じたこと 企業の世界、教育現場共に鈴木先生の強調される「組織風土」
そこで色んな人間関係の中で苦闘する人々のことにまずは注目し、組織風土の
土台を再構築しつつ、現状の個人の能力開発などの個々の問題と取り組む
姿勢の重要さを痛感しました。ハードディスクが壊れているのに、いくらソフトで
操作しようともがいても効果は生まれません。
わが国の政治家(政治屋達)、経済界、教育界等の指導者も是非鈴木先生の
指摘された観点を再検討して頂きたいと切望します。