1月8日~9日 残業問題解決の鍵は社員に気づかせること THE21(PHP)1月号より

             1月8日~9日   残業問題解決の鍵は社員に気づかせること  THE21(PHP) 1月号

                                   SCSK(株) 代表取締役会長兼CEO 中井戸信英氏執筆

 

       この筆者の経営する企業は、住商の関連するIT産業で、すでに私のブログでも、過労自殺

        の「デスマ-チ」で紹介しましたように、労働者を酷使して、使い捨て雑巾のように扱われた

        ことを想起します。しかし、筆者は、赴任して4カ月で劣悪な 労働環境の改善に着手し

         さらに、「残業問題解決」に当たっては、単なるトップタウンの手法でなく、残業時間短縮に

         対して報奨金を与えつつ、業務の効率化を工夫して残業を減らす手法をとりました。

          その結果各自の私生活に時間を有効に使えるゆとり(ワ-クライフバランス)の道が開けます。

          わたしは、かって社労士の勉強をし始めたとき、最初に注目した言葉が、これに関連した

          「労働の人間化」です。 筆者の観点もここにあると思います。

            なお、この企業は、日経新聞が選定した「人を活かす会社」の一位に選ばれています。

              筆者の記事は以下の通りです。

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        (一位に選ばれたことについて)ここ一年半矢継ぎ早に労働環境改善の施策を打ち出し、

   それに  基づいた成果が着実に出ていることを評価して頂けたのでしょう。

          ただ、同時に「うちは本当に日本一、人を活かす会社なのか?という自問自答を続けて

   いるのも 事実です。-----では、目指している理想はどこにあるのか。

         ITベンダ-は、社会の「神経」ともいうべきシステムをつくるのが仕事です。

   それほどの重要なものを、顧客の「こういうものが欲しい」という要望を読み取り

   しながら作っていく。

         ところが、実際にできたものが要望と食い違ってしまい、損失を出したり、場合に

   よっては 係争になったりといったりといった失敗が、業界トップクラスの企業でも

   少なくありません。

          当社は不採算案件の少なさでトップクラスの企業ですが、それでもさらなる業務品質の

          向上は大きな課題です。そして、その品質を担保するのは人です。

         「人は人材だ」とはどんな企業でも言うことですが、中でもITベンダ-の仕事は人が

    すべて だと私は考えています。。当社グル-プに一万人近くいるプログラマや

    システムエンジニア の心身の健康が確保されていなければ、日々の仕事が

    立ち行かない。システム構築を 業とする会社にとって、労働環境はそれだけ

    大事なのです。それにもかかわらず、この業界は、いわゆる「ブラック企業」の

    代名詞になってしまっています。

            今でこそ、当社の平均残業時間は、月30時間以上あったところ17時間台にまで減少。

             有給休暇の取得率も95・3%と極めて優秀です。

             しかし、2009年私がトップとして赴任してきたときの労働環境にはかなり

     驚きました。トイレが足りなくて行列ができている。ひる休みになるといつまで

     たってもエレベーターが  来ない。昼食後、オフィスの電気を消して社員が机に

     突っ伏して寝ている。昨夜は談話室で泊まった」などという会話が普通に

     されている。幅わずか90センチの 狭い机で、みんながごそごそと仕事をして、

     残業で疲れ果 てている。

              社会の「神経」を作る会社がこれでいいのか。そう考えて、赴任して4カ月で決断

     したのが 広くて明るいオフィスへの移転です。

     新しいオフィスには食堂と診療所を設置し、薬も受け とれるようになりました。

         ◎ この箇所の記述から筆者の「血の通った現場の労働者に対する問題意識のレベル」が

              分かります。労働者を単なる機械の部品としてしか見ていないのか、

     本当に彼らを「人財」として見ているのかよく分かります。いろいろな立法に

     関わる政府関係者、関係官庁の官僚 専門家の審議に参加される学識経験者等も、

     この筆者のように現場の実態を文字どおり、 精査して審議していただきたいと

     願望します。

 

                 <   残業問題解決の鍵は社員に「気づかせる」こと>

          以上の労働環境の対処に関連して筆者が取り組んだのが残業時間を減らすことです。

         はじめの一年間は、毎週金曜日の朝に開いている情報連絡会で、残業問題について

   毎回  話していました。「残業時間は心してコントロールしてほしい。とくに

   36協定違反の残業などは コンプライアンス違反で言語道断だ」などと話したのです。

          私の話を聞いた役員たちは、それぞれの部署に帰って同じように「残業を減らせ」

         と言います。 言い続けている中に、やがて部下たちに圧力をかけるようになって

        しまう。これで残業 問題が解決するのか。解決するわけはありません。

         残業の問題は、コンプライアンスを意識して、強制的な労働時間の規制といった

        方法で解決が  図られるのが一般的です。決まった時間が来たらオフィスに鍵を

        かけて追い出すといった やり方ですね。けれども、そんなことをしても残業は

     「地下に潜るだけです。」

        では本当に残業を減らすにはどうすべきか。社員一人ひとりの働き方の見直ししか

         ないのです. 健康的な生活ができる残業時間は、各自が考えれば自ずと分かるもの。

         ではどういう働きをすれば、その時間内に収められるのか。いかに業務を効率化して

          いくか。個々人がそう考える姿勢になるように、会社が施策を打つのです。

 

         例えば、 いつも長時間の残業をしている人というのは会社に泊まるような生活が

         当たり前 になっています。当然午前中はぼ- として仕事がはかどらない。昼食を

        食べたら14時頃 までに居眠り。15時頃からようやく馬力が出てきて「今日も半徹だな」---。 

      

        極端に言うとそんな働き方です。(筆者は、働くとき、休むときといったメリハリの

        効いた効率を求めます)

        しかも、長時間残業が常態化している人にとっては、残業代は死活問題。「残業を半分に

         しろ」といっても無理です。そこで、浮いた分の残業代は、報奨金として社員に還元する

          施策をとりました。言ってみれば、残業はしなくても残業代は払うということです。

          なぜこんなことをしたかと言えば、残業しないことの良さを気づかせたいからです。

           残業しなくても残業代がもらえるなら、残業しない方がいい。そこで仕事の効率化を

           考え出す。試行錯誤する中に「意外とやれるな」 「身体が楽になり、早く帰れて

    子供と 話す時間もできた」と実感するようになります。社員の心に訴え、業務上の

    悪癖を改善 する方法を自分で考えられるようになってもらうための投資だと

    いうことです。  

          ◎ 「残業しないことの良さ」とは、コ-チングでいう目的出しに通じるものを

    想起します。残業しなくてもよければと゜んなよいことがありますかの質問に対して、

    本人が  多忙の中、 潜在的に持っているwantを引き出し、doing(したいこと)

             being(在りたい状態)の答えが出てきて、その残業時間短縮に向かう

    モチベーションを 高めることになります。色んな改善提案が期待できる訳です。

             続いて筆者は、この残業削減の方針については、目に見えてその時間は減り

    出したと 述べています。そして労働時間が減っても、今の ところ業務に

    逼迫感(追いつめられる)が 出ている部署はないとのこと。

    売り上げ高も営業利益も伸びているとのことです。

            それだけ効率の悪い労働習慣がはびこっていたと指摘しています。

             そして次の筆者の言葉も経営者の理念がしっかりと伝わってくる印象を受けます。

             「残業を減らす魔法はありません。社員に、"どういう人生を送り たいのか"語りかけ、

                気づいてもらう。そして改善を促す施策を打ち、さらに語りかける。

     これを経営者が どこまで心を砕いてやれるか。これが本当の意味で

     "現場に入る"ということです。そうすれば具体的に優れた改善案は、現場から

     出てくるものなのです。」

 

 

 

 

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