職場のメンタルヘルス 26・12・5以後
12月 6日 「現代型問題社員」への実務対応 橋村佳宏弁護士による講義
すでにブログで述べました「問題社員」の記事内容と重複するのをなるべく避けて
要所になる箇所を適宜選んで自分の考えを述べていきます。この弁護士は、自ら会社の立場
から述べていますので、私は、企業と労働者の双方の視点からみていきます。
▲ 問題社員の定義について 講師の見解
「労働契約上の義務を果たさない社員」のこと。 この労働契約とは、労働契約法6条で
「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて
労働者及び使用者が合意することによって成立する」が基本にあって、この契約により
労働者が負う義務とは労働契約の枠内で、労働の内容、遂行方法、場所などに関する使用者の
指揮に従って労働を誠実に遂行する義務のことであると講師は述べています。
そして、 この義務は職務専念義務として就業期間中は、職務に専念しなければならず
職務と関連しないことは行ってはならないと定めています。この「職務に関連しないことの禁止」
については、携帯電話、インターネット上の私的目的による利用などが該当するとの見解です。
▲ 現代型問題社員の特徴
上記の問題社員に関連して、色んな専門家が「現代型問題社員」に言及しています。
この言い方は、「今時の若い者は」と年配の人々が彼らを批判するとき、オ-バ-ラップする
感じがします。また、「新型うつ」の新型の意味合いもそれに近い感じがします。
橋村弁護士は、この現代型問題社員の特徴として次の3点について指摘しています。
ただしセミナ-では、私の受け取った感じでは、丁寧な説明はなかったと思います。
ですから、私の主観が入った説明になります。
①権利意識の高まりと偏った情報の氾濫
若者の成長過程での家庭、学校等の育った環境における甘えの構造の中で培われた
自己中心的な言行に関係する権利意識のことと推察します。
入社して社内の服務規律の中で、上司と対立した時などそのことが露呈しやすくなります。
後者の「偏った情報の氾濫」とは、多様な価値観があふれる中、若者なりに、ネットなどを利用
して、彼らにとって望ましい考え方、価値観を形成していく中で当然偏りが生じ、世代間の
ギャップが生まれます。
② 携帯、インターネットの普及により生じる新たな類型---まさに上記のことです。
③ ワ-クライフバランス・職場内人間関係に対する世代間の意識のギャップ。
前者のことも説明はなかったと思いますが、推測すれば、先輩労働者の「仕事人間」時代
から、職場から解放された「自分の生活時間」を大事にしたいのは、一般的な風潮。
特に若者にはその傾向が強く、時間外労働などで上司との対立も生じます。
後者の世代間のギャップもすでに述べています成長過程の違いなどが影響しています。
◎ この世代間のギャップの問題に対処する記事のブログにつきましては、
26年8月14日から9月4日の「部下を引き出す」本田有明氏著に関するブログ
職場のメンタルヘルスの記事に出ています。この本は社労士会推薦の図書です。
興味ある方は参考にして頂ければ幸いです。
次に上記の現代型問題社員の関係記事としてパワハラ、メンタルヘルスから抜粋して
紹介します。
▲ 現代型パワハラへの対応
1 現代型パワハラ問題の特徴
● パワハラの形態の多様化
a 業務負荷の大きい上司によるパワハラ----生産性向上、売り上げUP等の圧力を
受けて
b 高年労働者を中心とした無意識パワハラ(働き方に対する世代間のギャップ)
自己の経験に基づく年下労働者に対しての叱責など。
c 逆パワハラ
d 同僚間のパワハラ(いじめ、嫌がらせ)
● パワハラという言葉がひとり歩きしている現状
「ひとり歩き」の意味の中で注目されるのは、上司からすると部下に対する職務上 当然の指示命令、叱責なのに、部下の受け止め方次第では、パワハラ事件、
さらには訴訟になっていくことへの弁護士の警告をこめた指摘と感じます。
従って次のパワハラ社員(パワハラを受けたと訴える)への対応が求められます。
2 パワハラ社員への 基本的実務対応 --パワハラと訴える社員に対して
まずは弁護士の見解を要約し、その後で私の見解も述べてみます。
① 予防策
社内研修で管理職を中心としたパワハラについての刑法や民法上の知識のこと
企業秩序に関することなどのコンプライアンスについて学ぶ。
また、何故パワハラが問題なのかについても学び、管理職のパワハラを未然に
防止し、且つ管理職に逆パワハラに萎縮しない適正な労務管理を行ってもらう。
以上が橋村弁護士の見解です。
管理職教育ならこれでよろしいでしょうが、上司部下の信頼関係はそれで築けますか?
世代間のギャップをどう縮めていくか、この努力が不可欠です。
若年の部下は、欠点だらけの未熟者、上司だって、叩けばホコリが出る存在です。
「敵を知り、己を知らば百戦危うべからず」(孫子の言)
上司も自己の非を認め、反省して人間的にも成長できてこそ部下は尊敬します。
過去の経験で得たノウハウの貯金に乗っかって威厳を保とうとしても部下に見抜かれて
しまうことだってあるのです。過日のコ-チAの稲川氏の記事「自分をさらけ上司」の
ように心のゆとりが部下との信頼を増すことも実際にあったのです。
『何でも話せる上司」でなく『相談できる上司」に出会った部下は、かえって「きついこと」を
言われて感謝します。
世代間の距離を縮める努力。相互の価値観の違いを理解しあう、アサ-ティブな態度
関連して、一方的な指示命令だけでなく、、コミュニケーションスキルを習得することも
双方の信頼関係を増す上で不可欠です。傾聴、コ-チング、アサ-ションなど。
② 事後対応
ライン管理や内部通報制度などを端緒にパワハラの疑いが確認できた段階で、
速やかに調査し、適切な対処を行う。
具体的には、速やかに関係者にヒアリング等の調査を実施した上で、会社において
事実認定を行い(事実をあいまいにしない)、認定された事実に基づいて懲戒、降格
配転等の措置を講じることになる。
(但し大きな会社ではこれは可能としても、中小企業では困難です)